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序章 拝命


「この国は雨季と乾季に分かれます」
 水に櫂を差し入れながら、男は言った。水面に残る轍を、エイは眺めていた。この国の水は濁っている。茶色く。その何ともいえない水の土色が、不思議でならなかった。自分の国の水は、常に清んでいた。流れが速く、土砂全てを、母国の水は押し流す。
 この国の水は流れが緩やかで、降りしきる雨が川底をかき回す。そのたびに舞い上がる枯葉や土砂が、水を濁らせるのだ。時折きらりと光るものがある。それが、魚であるのだと理解するには、少しばかり時間が掛かった。
「貴方は運がいい。今のこの時期が一番過ごしやすいですよ。雨季は道のあちこちが水没して、なれない人はすぐ迷います。乾季は逆に水がなくて、土埃が凄いんですよ。目を開けていられなくなりますからね」
 見るもの全てが目に新しい。
 古い、ひび割れた土壁の平屋が軒を連ねる街だ。人々は貧しく、土色の貫頭衣をきて、衣服の裾をたくし上げて結んでいる――水に、裾を濡らさないためだった。街のほとんどが、水没しているといっていい。雨季は常にこの状態だという。排水設備が、整っていないのだ。
 そのかわり、人々は逞しく、水を掻き分けて町をいく。母親らしき女性が、籠にしなびた果物を詰め、それを頭の上に乗せて歩いている。手の引かれる子供は小さな壷を抱えていた。
 貧しい民人が道なき道をいく。自分の幼い頃、自分の母国もそうだった。水の帝国――裏切りの帝国と、呼び習わされている世界でもっとも古い歴史を持つ国。自分の母も、あぁやって自分の手を引いて、噛めば甘い汁のでる草を売り歩いていた。今、確かに母国は貧しいものも存在するけれども、この国ほど逼迫してはいない。政治は整えられ、民の生活は徐々に潤い始めているのだ。
 一方。
 この国は今の水の帝国と比べれば、天と地ほどに開きがあるほど、貧しい。国政も混沌としている。建て直しの見通しは、付いていなかった。
「お一つ、いかがですか」
 小舟に追いついた先ほどの親子が、しなびた果物の入った籠を差し出した。どの果物も綺麗に磨かれてはいるが、色が悪い。腐りかけたそれも、この国では金貨一枚の価値がある果物なのだろう。この親子は、食べているのだろうか。よくよくみれば、母親らしき女は、自分と同じ年頃だった。つまり、まだ二十歳をすぎるかすぎないか。なのに皮膚には皺が目立ち、解れた髪は白髪が混じる。子供の腕も細かった。昔の、母と自分の姿だった。
 エイは二つ、果物を買った。銀貨を一枚、壷に入れた。多すぎるといってもいい金額を、こっそりと。あまり、施しをするのはこのものたちのためにならない。浅ましいほかの民人が、それを発見すれば親子から銀貨を奪うだろうし、自分にものを売りつけようと群がられても、困るだけだ。それほど、持ち合わせがあるわけでもなかった。
 船はゆっくり、街を行く。
「この時期、もっとも漁が盛んになります。水が引く寸前、皆、海に戻ろうとしますからね。そこを獲るんです。一番、国が活気付く頃合といってもいい」
 舟頭は、淡々と言葉を続ける。おそらく、自分が聞いているか聞いていないかは問題ではないのだ。
「ですが治安には気をつけたほうがいいですよ旅の方。いくら蠱毒がようやく定まったとはいえども、日が浅いですからね」
「……こどく?」
「私たちの、王のことです」
 ぱしゃん。
 水が跳ね、波紋が広がる。一つ、二つ、三つ。その輪の中、揺れる、自分たちの影。
「この国の王には代々数多くの子供たちが生まれる。色欲旺盛、ということなんでしょうね。そして、子供たちは例外なく殺しあって、王座を奪い合う」
 首をかしげたエイに、男は笑う。自嘲のように。どこか、諦めに似た眼差しを、街の奥、枯れた森に埋もれるようにして鎮座する、王城に投げかけながら。
「蠱毒というものが、もともと何を意味するか、ご存知ですか?」
「……いえ」
 蠱毒という響きを、エイは聞いたことがなかった。国の中でかなり見識は深いほうであると自負してはいるが、国を一歩出るだけで、それは独りよがりであったのだと、思い知らされる。
 舟頭はさしてエイの無知に気に咎めた様子も、馬鹿にした様子もなく、淡々と、蠱毒についての説明を口にした。
「蠱毒は、薬の名です。ご存知の通り、この国はかつて[・・・]医療で名を馳せた。他国のあずかり知らぬ方法で作り出す妙薬も数多く、蠱毒はそのうち一つなのです」
「……それで、その蠱毒とやらはどのようにして作るのですか?」
「虫を食らわせあうのですよ」
 思わず。
 絶句したエイに、男は口の端に笑みを刻んでいた。してやったり、という顔であった。その口調の滑らかさからも、説明しなれているのだろう。
「一つ、玻璃の小瓶を用意します。壷でもいい。その中に、ありとあらゆる虫を入れます。蛾、蟻、百足、蟷螂、蜘蛛。蛙や、蜥蜴なども、時に」
「……それで」
「その小瓶、もしくは壷を密閉し、魔術の方陣の上に放置します。一月、二月、三月。餌も何もない空間で、それらは互いに殺し合いくらいあう。最後に、一匹だけが、残ります。それを材料に、作る妙薬は、時に食い荒らされた虫たちの怨念を吸って、強力な呪いの薬となる。時に、どんな病も治す霊薬となる。それを、蠱毒と呼びます」
 一拍おいて、男は見てください、といった。男が顎で示唆したのは、古い森と濁った水に侵食された、貧困に喘ぐ町並みだった。
「かつては、榕樹の恩恵にあずかり、医療で名を成した小国でした。そのときの王もまた、数多くの兄弟たちの血で自らの手を濡らして、玉座に登った王であったけれども……それは、食い合わせ[・・・・・]が良かったのでしょう。先代の王も、無論兄弟たちを自らの手で葬り去って玉座に登った。けれども、その王は存在するだけで周囲を滅ぼした。私たちの国にとって、呪いの王だった」
 ぱしゃん。再び、傍らで魚が跳ねる。それを追って、子供たちが水を蹴散らして走っている。
 エイは目を閉じ、この国を訪れる前に目を通した資料を思い返した。それには、王が崩御してもう十年以上にもなると書かれていた。そして彼には、幾人もの愛人がおり、その愛人の数以上に、子供がいたとも。王が妾を数多く抱えるのは別段珍しいことではない。今の自分の主である、水の帝国の皇帝が、稀有なのである。彼は后を召し上げたのみで、ただの一人も、側室を持たない。
 だからこそ、その資料を読んだときには、何も、思わなかったのだが。
 この国も、呪われているのだ、と、エイは思った。
 かつて、水の帝国が、裏切りの帝国と呼び習わされていたように。
 この国も、古い呪いを、引きずっているのだと。
 さしずめ、蠱毒の小国、といったところか。
「此度の蠱毒は、呪いかそれとも霊薬か」
 舟頭の言葉には、皮肉が込められている。
 水が巻き上げられた土で透明さを失っているように。
 空も、鈍重な雲で蓋をされ、青さを失っていた。




蠱毒の小国




 ことの始まりは、皇帝の命だった。

「リファルナ?」
「銘を、榕樹[ようじゅ]の小国という。榕樹の小国リファルナ。知っているか?」
 煩雑という二文字が相応しい、執務室。最古の帝国を治める皇帝は、微笑を浮かべてそういった。椅子に腰を下ろしたまま、彼は自分を見上げている。
 珍しい皇だと思っていた。
 昔も。
 そして今も。
 普通、為政者の頂点に立つものは、自分たち民を睥睨する。自分の皇は、いつも自分たち民を見上げている。理想の、敬愛する、我らが皇帝。
 名を、ラルト・スヴェイン・リクルイトという。御歳二十七、在位九年を数える。世界最古にして、最も荒れた国といわれた水の帝国を、この十年にも満たぬ年月で復興させた、賢帝だ。
 彼は、エイを呼び出すなり、いってほしい国がある、と一言告げた。自分が宰相補佐という官職の下、この執務室に出入りを許されてから、一年が経過している。ラルトが、自分にそのような命を下すのは、今回が初めてのことであった。
 宰相補佐。それが自分、エイ・カンウに与えられた役職だ。エイは、嗤いたくなる。宰相補佐。補佐するべき宰相は、一年以上姿を見せていないというのに。
 外交として、他国を飛び回っている、というのが表向きの理由。事実、彼から定期的に報告書が送られてきているらしく、それを元に皇帝は数々の政策を打ち出している。エイが国から出なかったのは、補佐すべき宰相が外に出ているからだ。彼に代わって、国内の仕事を請け負う。そういうことになっている。
 けれども、一年もすればわかってくることもある。宰相は、おそらく戻ってはこないのだ。もうすぐ、十年になるラルトの執政を、支え続けたのは彼の幼馴染であり乳兄弟でもある、宰相家シオファムエンの当主、ジン・ストナー・シオファムエンである。いくら外交上の都合とはいえ、ラルトの執政の右腕としてあり続けた彼が、一年も国に一度も立ち寄らないなど、おかしいにもほどがあるではないか。自分だけではない。大臣たちも、違和感を覚え始めている。何せ宰相は、ラルトの婚儀にも出席しなかったのだから。
 愚鈍が多かった大臣たちは、この一年でかなり代替わりしていた。勘の鋭いものたちも多くいる。皇帝は宰相からの報告書を手に、のらりくらりと彼らの追求をかわしてはいるけれども、誤魔化しきれるはずもなかった。
 復興するにつれて、仕事も複雑なものにすり替わっていく。国内だけに目をむければよかったものごとが、国外も対象にせねばならなくなる。その[せわ]しい時期に、宰相の姿がないのは奇妙にもほどがあるのだ。時が、来たということだろうか。本来宰相がすべき仕事を、皇帝は今、自分にも分け与えようとしている。
 かつての、自分なら。
 官職を戴き、宰相補佐としてこの執務室に足を踏み入れるまえの、幼い自分ならば、その命を喜んで拝命していたかもしれない。
 けれども今は、恐怖に、足がすくんでいた。重責に、押しつぶされそうだった。国内の仕事を拝命するときでさえ、常に重圧が自分の肩にのしかかっている。だというのに、今自分の責任は、国外のことに関しても及ぼうとしている。皇帝の、期待に、自分は添えることができるのだろうか。
 宰相のいない、宰相補佐という官職――その位に甘んじていられたのは、ひとえに、皇帝の優しさといっても良かった。
 何故、恐れるのか。更なる高みを目指すかつての同輩たちは、エイの出世ぶりに羨望の眼差しすら向けてくる。何故、恐れる必要がある? お前にはそれをこなすだけの、実力があるではないかと。
 そんな戯言は、この執務室に残されている、資料を目にしてからいうがいい。
 皇帝が、打ち出す政策。
 宰相が、残した原案。
 その二つを、目にして、恐れを感じないというのなら、戯言を口にするがいい。
 この、水の帝国は述べたように世界最古の帝国である。そして、古い呪いに喘ぎ苦しんでいた。今となっては、果たして呪いであったのかどうか疑わしいそれに、自分たち民は喘いでいた。貧窮していた。世界でもっとも醜い国、と、呼ばれたときもあった。
 それを僅か十年足らずで立て直した我らが皇帝と、今どこの空の下とも知れぬ宰相は。
 文字通り、天才なのだ。
 初めて彼らの仕事の軌跡を目にしたとき、エイは恐れ、震えた。見たこともない政策の原案。それを実行してきた、彼らの技量。広い視野。膨大な知識。実行力。決断力。それらを支える、精神力。
 彼らには、世界が見えている。彼らは、神の眼を持っている。それに比べれば、自分が行ってきたことは、なんて稚拙なのだろう。そう思わざるを得なかった。
 皇帝は、今、宰相のいない穴を一人で埋めて奮闘している。宰相とともに行うはずであった政治を、彼は一人で背負っている。無論、数多く良き人材は集いつつある。その中で彼を慕うものは増えるばかりで、自分も彼を敬愛する一人であると自負してはいる。だが、それでは、足りないのだ。かつて、この国には天才が二人いた。失われたその片割れの穴を、埋めるには、それだけでは、足りないのだ。
 エイもこの一年間、力の限りを尽くしてはきた。けれども、力不足を自覚せざるを得ない。何より、自分は皇帝と同じ視点に立つことができない。彼のみるものを見て、理解することが、できない。
 けれども、自分には、宰相の穴を埋める責任がある。
 それをするだけの、理由が、あるのだ。
「……だ。……い……エイ?」
「は、はい?」
 物思いから引き戻されたエイは、弾かれたように面を上げた。執務の席についた皇帝は、組んだ手に顎を乗せて、苦笑している。
「なんだ、聞いていなかったのか?」
「……は。も、うしわけ、ございません。突然の命でしたので、驚いて、しまって」
「そうだな。……まぁいい。もう一度いうぞ」
「申し訳、ございません」
 頭を下げると、次は気をつけろ、という小さな叱責。だが笑いが、含まれている。本当に責めているわけではないようで、それが余計にエイを申し訳なくさせた。
 皇帝が机の上に山積みされた本の中から、一冊の冊子を取り出す。端が日に焼けて黄ばんでいる。ぱんぱんと軽く埃を払った後、それを差し出しながら、先ほども口にしていただろう説明を、彼は丁寧に繰り返してきた。
「最近、近隣諸国で中毒性のある水煙草が流行っていてな。聞いたことは?」
「小耳になら挟んだことがあります」
 資料を受け取りながら、答える。近頃、ここ東の大陸で流行りだした水煙草の亜種。発祥はどこと知れないが、最近は隣国ダッシリナにまで広まり始め、それに大枚をはたくものが後を絶たないという。
 皇帝は満足げに頷き、説明を続けた。
「ただの水煙草ならかまわないんだが、問題はその内容物だ。酷い幻覚症状と、中毒症状を引き起こす。服用した当人の思考能力を奪い、時に廃人にまで追い込む。しかも依存性が極めて、高い。まだ、どうやらうちの国には来ていないようだが、時間の問題だろう。蔓延するその前に、手を打っておきたい。そのために、お前に、リファルナへ行ってほしい」
「……リファルナという国は、一体どういう国なのですか?」
「医療の国、といえばわかるか?」
 医療の、国、と口の中で皇帝の言葉を反芻する。彼は笑い、机の上ではなく、今度は背後の本棚に手を伸ばした。そのまま、一冊の本を選び引き抜く。その際にばさばさと幾冊か本が落下していったが、彼は気にする風でもなかった。執務室は、いつも、このようなのだ。このように煩雑であるのに、皇帝はどこに何があるか明確に把握しているらしい。その点に、まず感服である。
「とはいえど、元、医療の国だ。うちの先々代がまだ皇太子であったころの話だから、もう百年ほど前になるのか。その頃、リファルナは医療の国として、小国ながら世界中に名を馳せていた」
「今は、違うのですか?」
「違うな。十年前のここと似たようなものだと、思っておけばいい」
 十年前の水の帝国と、似たような。
 それは、かなり、というか、酷く、荒れているということを、意味するのでは、ないか。
 表情を引き攣らせるエイに、そんな顔をするな、と、皇帝は微笑んだ。
「詳しい話はその二冊に書かれているんだが……端的に言ってしまえば、かつての名残は、現在も残っているということだ。今も細々とではあるが、他国に薬を売って、その国は外貨を得ている。件の水煙草も、元はその国から輸出されたものだという話だ。毒を売る国が、解毒薬を持っていないはずがない。幸い、近年新しい王が立ち、国の情勢は持ち直し始めていると聞いている。少々冒険にはなるが――」
 敬愛する皇帝に。
「行ってはもらえないか。エイ」
 そう懇願されれば、断れるはずもない。
 たとえ、足が責務の重さにすくんでいても、自分は歩かねばならないのだ。
 エイは手と拳をあわせ、静かに一礼した。
「御意に」


「……何故、彼を」
 窓の外を見つめる自分に、女官長はそう尋ねてきた。自分の幼い頃から、つき従ってきた、家族ほどに慕わしい女官。彼女の顔には今、怪訝の二文字が浮かんでいる。
「よくは存じませんが、その国が、水煙草を売っていたのは、公ではないのでしょう? そんな国に、解毒薬をと申し入れて、簡単に差し出すはずが」
「ない、だろうな。あの国が疲弊しすぎていることも考えれば、処方箋、解毒薬、そんなものが存在するのかどうかも怪しいさ。苦労は、するだろう。公式の文面では、単なる即位の祝辞を述べに行くだけだ。歓迎はされるだろうがな。何せ、上手く行けばうちは奴らの金づるにもなりうる」
 水の帝国は、大国とは呼べずとも、安定を保っている。外交も滞りなく。経済的にも徐々に向上して、国内の民の生活はそれなりに潤っているといえるだろう。ここまで引き上げるのに、十年近く要した。たった十年と、人はいう。
「実際は、そんな余裕これっぽちもないんだが」
 ラルトは、嘆息した。結局、九年間では、どうにもならないことのほうが多い。表向きは、安定している。経済的にも、豊かに、なり始めている。けれどもこのかりそめの安寧が、一体何時まで、続くか。ほんの僅かなきっかけで全て破綻しかねないことは、皇帝であるラルト自身が一番よく判っていた。
「エイを差し出す余裕も、無論、ないんだがな。そうはいってはいられないだろう」
 エイに、これまで仕事を預けなかったのは、自分自身の我侭[わがまま]だった。けれども、そうはいってはいられない。そう、決めたのなら、エイにも、成長してもらわねばならない。生真面目だと幼馴染に笑われていた自分が案じるほど、生真面目すぎるほどに生真面目な彼が、脱皮をするのには何かのきっかけが必要であると、かねがね思ってはいたのだ。
 彼は、世界を知らない。が、己が世界を知らないことを、知っている。完全な無知ではなく、故に、足掻いている。より広い視野を求めて、けれどもそれを上手く手に出来ないことに、足掻き苦しんでいる。
 このままでは、エイ・カンウという男は、壊れるだろう。彼は、重責に押しつぶされるあまり、何故執政に関わろうとしていたのか、彼は彼自身の、行動原理を支える大切な何かまで、見失いかけている。
「あいつを使者として遣わすのは、それなりの誠意だよ」
 誠意だ。国の裏と取引をしようという、自分から、かの国の新王に対する。
 ラルトは、瞑目した。先ほどまで眺めていた光景が瞼の裏に残像を残す。窓からは、夕暮れに沈む帝都の街並みが見えた。
 ただ。
「ただ」
 願わくば。
「願わくば、かの国の新しき王が、善き王であらんことを」
 そして、この旅が、エイにとって、有益なものであらんことを。
 瞑目したまま、ラルトはすでにエイを乗せて港を発ったであろう船を思った。


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