BACK/TOP/NEXT

第三章 六花の狼煙 1 


「ひっぐしゅっ!」
 どうやら、風邪を引いたらしい。
 ジンは鼻をすすりながらため息をついた。体調管理は旅をするために身につけるべき最低技能の一つ。だというのに、早朝から雪遊び、もとい、瑪瑙球捜索を行っていたのが悪かったのか。
 外を見ると、また吹雪き始めていた。本当にこの国では、嫌になるぐらいによく雪が降る。かちゃ、と茶を淹れたばかりの茶器をアレクの前において、ジンは呆れた眼差しを送った。
「いい加減に機嫌なおしなよ殿下。ちょっとぐらいモニカっちゃんに怒られたぐらいで。子供じゃないんだからさぁ」
「五月蝿い」
 怒鳴り返してくるアレクに、呆れた眼差し一つを送る。
 確かに彼女の怒りは、半ば八つ当たりであったが。
 というより、とばっちりを受けたのはジンも同じだ。彼ばかりではない。
 だが城の彼の自室に戻ってきてずっと、アレクは不機嫌の極みにあった。
 品の良い調度品で纏められたアレクの自室は、ジンがここにきて、モニカの宿と二分するほど長く時間を過ごしている場所でもある。傍にいないとアレクは後々口やかましいので――いや居ても口やかましいことには変わりないのであるが――ジンは大抵、書庫から本を借りてここに持ち込み、時間を潰す。居心地がいい場所のひとつだ。だが今は、アレクが発する重々しい空気のおかげもあって、居づらさに押しつぶされそうである。アレクを実力でねじ伏せることは簡単であるが、彼の癇癪には極力付き合いたくないというのが、ジンの本音であった。
(鍛錬場にいこうかなぁ)
 自分の分の茶をすすり、ジンは思った。読書以外でこの城に居付いて以来行っていることといえば、訓練の付き合いだ。鍛錬場で、アレクやリシュオ、兵士たちの相手をする。リシュオはともかく、兵士たちは農閑期の間雇われている農民で、戦法はでたらめでも腕力があった。いい運動になる。
 ちなみにこの豪雪と、六日続く夜で、たとえ地脈流れる魔力が豊かであるためだという理由を存じてはいても、どうやって穀物を育てるのか、はなはだ疑問であった。が、農閑期があるということはきちんと農作業を行う時期もあるということで。どうやら自分はその次期を待たずに、次の国へと移ることになりそうである。あの、入り混じってしまえば家族のように接してくる小さな国特有の人懐こさを浮かべる兵士たちが、素朴に、且つ特殊な条件下で農作業に精を出す姿を、見てみたかった気もするが。
「まったく……」
 アレクがようやく沈黙を破ったのは、お茶もぬるまって、そろそろ入れ替えようかとジンが椅子から腰を浮かせたころだった。
「あの女、本当に嫁の貰い手がなくなるぞ。あの凶暴さ! みたか?」
「うん見た」
 とぽとぽとお茶を注ぎなおして、アレクの訴えをジンは素直に肯定した。凶暴、というには多少語弊がある。彼女はただ、勝気なだけだ。
「あいつはいつもそうだ。俺に向かって、本気で尊敬とか畏怖だとかそういったものが全くない。しとやかさも何もかも、本気でどうしようもない」
「うんそうだねー」
「おい」
「そうだねー」
「ジン」
「うんそ」
「てめぇもいい加減に頭くる奴だ蹴り殺すぞ俺の話をきちんと聞け!」
 ばさ、と本が取り上げられる。せっかく読んでいたのに、と多少憮然としないでもなかったが、即座に微笑をうかべて頬杖を付いた。アレクはジンの傍に立っていて、何が面白いんだこんなもの、と取り上げた本を壁のほうへと放る。
「本に八つ当たりするのはやめようよ殿下」
「貴様本と俺どちらが大切だと思ってやがる!」
「本」
「……おーまーえーなー!」
 立ち上がって壁際へと歩く。壁に叩きつけられた衝撃で、わずかながらにひしゃげた表紙、折れ曲がってしまった頁に向けて吐息を零す。拾い上げて軽くその埃を叩き落としながら、ジンはまず結論から述べることにした。
「つまり、殿下はものすごくモニカちゃんのことが好きなんだよね?」
 返事が、ない。
 怒鳴り返してくるのかと思いきや、続いたのは一瞬の沈黙である。一瞥すればアレクは拳でも入りそうな具合に口を開けて、微動だにしていない。ジンは硬直するアレクの横をすり抜けた。ぼす、と綿の詰められた布張りの長椅子に腰を下ろし、結論にたどり着くまでの考察を、頬杖をつきながらとりあえず説明してやった。
「まぁ考えてみれば誰だってわかるけどっていうか、絶対みんなにもろバレだと思うけれど。好きな子ほど苛めたくなるって、なかなか典型な青少年だねぇ殿下。毎日毎日会いにいって、軽くあしらわれて一日中モニカちゃんについて愚痴を並べ立てる。だけど彼女にだけは決定的な暴力を振るうわけでもないし。ね。でもまぁ脈ありなんじゃないの。叱られるうちが花ですよ。ガンバレー」
 ぱらぱらぱら、と軽く頁をめくってみる。そこに載っているのは、この国に残る古い伝承だ。あらかた頭に入れて、気に入ったものは書き写してある。もう用はなく、書庫に戻すために小脇に抱えて、ジンは立ち上がった。
「き、き、きさまなー! そんなに人のことを馬鹿にして面白いか!」
「馬鹿にしているわけじゃないよ全然」
 ジンは本心から答えて微笑んだ。アレクの恋は真っ当だから。ジンには真似できない純朴な不器用さで紡がれる真っ当さ。彼は人を愛しても、その相手を壊したりはしないだろう。モニカに脈がないわけではない。ほんの少し年下の青年たちの、どこか微笑ましくある恋は、時間が経てばいつか実るだろう。
 ふとジンは、そういえばこの国は戦乱の渦に飲み込まれるのだ、と思いなおした。この牧歌的な平穏が何時までも続いていて欲しい気もするが、シルキスは壊すのだろう。一体どういった理由で、それを行うのかは、ジンの興味の及ぶところではないのだが。
「でもそろそろ、馬鹿王子はやめたほうがいいと思う。殿下」
「……馬鹿王子馬鹿王子とどいつもこいつも」
「あはは。だって馬鹿王子だもん」
 顔を猿のごとく紅潮させて頭上から煙を出すアレクに、笑ってジンはさらりと断言する。脳裏にあったのは幼馴染の姿だ。齢十八にして皇帝の身位についた幼馴染は、それまでの苦労もあってアレクとは比べ物にならないほどに老成していた。そしてそれは自分も同じであったのだろう。あの国の複雑な機構と、繰り返し行われる裏切り、暗殺は、神経をすり減らせ人を早く成熟させる。
「どこへ行くんだ?」
 扉に手をかけたジンは、背後に投げかけられたアレクの問いに振り返った。軽く本を掲げて、にこりと笑う。
「書庫。あと買い物」
 その回答に、アレクが不機嫌そうな面持ちにさらに怪訝さを加えた表情をしてみせた。
「は? 貴様また町へいくのか? 吹雪は嫌いだと抜かしていたのはどこの誰だ」
「俺。だけど仕方ないじゃんちょっと買いたいものあったのに、殿下たち強引に俺のことひっぱってきちゃうんだからさー」
「明日済ませればいいだろうが」
「あーうんそれも考えたけど」
 胸中で日数を軽く数える。『夜』が明けるのは明々後日。それまでに準備は少しずつ整えておかなければならない。防寒具、火種、食糧、招力石の屑も、いくらか必要だ。馬鹿馬鹿しい話だが、こまごましたものは衣服に縫いこんでおくのだ。その作業に対する時間も、欲しかった。
 そのわずかな黙考に、何か意味をかぎとったのか、アレクがふと頼りなげな声を上げた。
「……お前、ここから出て行くつもりか?」
「えー? あーうん」
 ジンは少し逡巡しながらも素直に頷いた。今更否定する必要もないだろう。だが瞬間、アレクはこれでもかというほど顔を蒼白にして、それは怒りの沸点を通り過ぎてしまった人間の青ざめ方だと、ジンには直ぐに理解できた。
「……おま! 勝手に出て行くことが許されるとでも思っているのか?!」
「どうして許されないのさ。殿下は確かに俺の雇い主だけど、俺の主人ではないわけだし」
「なら俺の僕になれ!」
「ヤ、ダ」
 にっこり笑いながら完全否定。それに言葉を詰まらせてただ憤怒に顔を青ざめさせるばかりのアレクに、ジンは苦笑した。
「誰が好き好んで下僕になれっていわれてうんっていうのさぁ」
「出て行け!」
「あーそー? わかった。んじゃ、お疲れ様」
「おいちょっとまて出て行くな!」
「えーどっちよー?」
 当惑で判断力が鈍っているのであろうが、こうも相反することを言われると困るのだ。どちらが彼の本音であるかなど、わかりきったことではあるのだが。
「で、でていくな!」
「無理だよ」
 扉の取っ手に手をかけて、ジンは静かに断言した。無理だ。自分は一箇所には留まれない。厄介ごとは御免だ。自然の脅威と人が巻き起こす戦乱。どちらがましかと問われれば、自分は迷うことなく前者をとる。自然の脅威は学べば往なすことができる。人は、狂気を孕んでいるがゆえにその影響が計り知れない。自分はそれを、身を以って知っている。
「無理だ」
「……お前も」
 アレクの拳が震えている。噛み締められた唇には血の気がなく、眉根がきつく寄せられている。ジンは目を細めて、異形の美しい王子を見つめた。
「お前も、リシュオを」
「俺どっちかっていうと殿下のほうが好きだよ弟さんより」
 アレクのいわんとしていることを読み取って、ジンは先を制した。
 アレクには、表裏がない。よくも悪くも。横暴で、無知で、傲慢な、どこか憎むに憎めない王子。リシュオのほうを贔屓目でみるものたちが多いのは致し方ないとして、それでもこの異形の王子は周囲を惹き付けてやまないものがある。それは、政治能力云々というよりも、王になる資質のようなものだ。もっとも日々の研鑽を怠っていれば、その資質は単なる宝の持ち腐れであるが。
 それを理解していない、どこか愚鈍な王子のことを、ジンは嫌いにはなれない。むしろ好いているのだと思う。
 けれども。
 はっとしたように上げられるアレクの顔に、ジンは柔らかく微笑んでやった。
「だけどそういう問題じゃない。俺は殿下の下僕にはならないだけだよ」
「……何が欲しい?」
 富か、権力か、女か。そういって、取引を持ちかけてきた人間は数多くいた。
 自分は、何も要らない。
 欲しかったものは、全て指先から零れ落ちていった。
 すべて。
 自分から、指先を開いた。その砂金の粒が、自ら滑り落ちるように。
 そうして全て、失った。
「何も要らない。俺が後にも先にも、追従しようと決めたのはたった一人だからだ」
 そして、愛した男も女も少女も、もうこの手に取り戻すことは不可能だから。
 開いた扉に身体を滑り込ませる。廊下に立ちこめる雪の冷気が頬に触れ、肌を一気に粟立たせた。沈黙し、ただ立ち尽くすアレクを置き去りに、ジンは静かに扉を閉めた。


 荷物を纏めるのは簡単だった。旅に持ち歩いている鞄の中に、雑記帳と外套を放り込むだけでよかった。もう一つの鞄の中には、ここに滞在するために手に入れた衣服数着を詰めて。それは町で売りさばき、新しい防寒具と旅の必需品を手に入れる。その二つの鞄と青龍刀を引っさげて、町へと移動。
 叩いた扉の先は、モニカの宿<トキオ・リオ・キト>だ。
 出てきた給仕の少年に、モニカを呼ぶように頼む。手を前掛けで拭きながら奥から出てきたモニカは、こちらの雪まみれの姿を見てだろう、驚愕の声を広間に響きわたらせた。
「ちょっとどうしたのこんな吹雪の中!」
「御免、部屋一つ空いてる?」
 鞄を床に落としたジンは、防寒具を脱ぎ、こびりついた雪を叩き落とした。モニカが手ぬぐいとお茶を用意するように取り計らってから、その湿った防寒具を引き取るべく手を差し出してくる。やんわりその手を断ってから、ジンは防寒具を小脇に抱えた。
「いいよ。部屋空いてる? 夜明けまで滞在したいんだけど」
「あ、アレクはどうしたの?」
「俺にでていって欲しくないんだってさ。もう一回顔つき合わすのめんどくさそうだったから、城から出てきた」
「あ、あ、あのねぇ……」
「それよか、部屋空いてる? モニカっちゃん」
 彼女は困惑の眼差しでジンを見上げてくる。どうするべきか考えあぐねている、といった様子だ。彼女は腕を組むと、やれやれという小さな嘆息と共に呻きを漏らした。
「急だから……」
 ない、ときっぱり断られる。商隊が滞在しているせいで、満室であるのだと。先日もそう言っていた。
「別に俺、食堂でも眠れるんだけど」
 ジンはそう付け加えた。寝る場所さえ確保できればいい。それなりに暖がとれる場所ならば、台所の隅でもかまわない。その意向を伝えると、そんなわけにはいかないでしょうと、モニカが口元をへの字に折り曲げた。
「……食堂で待っててくれる? 家の屋根裏部屋を、用意するわ」
「ありがとう」
「埃だらけだから、ちょっと時間かかるわ。寝床しかきちんとしてあげられないわよ」
「いいよ。それだけで十分」
 モニカが唸る。まったく、忙しいのに、と。
「宿代はちゃんと払うよ」
「当然でしょ。特急料金よ。本当に……まったく、貴方って人は。本当にでていっちゃうのね」
「うん」
 こめかみを押さえながら深いため息をついたモニカに、ジンは頷いた。彼女は衣服の裾をからげ、靴の踵を高々と鳴らす。そこに不満の意志が命一杯こめられているのは明白だ。その足取りの力強さはジンの笑いを誘ってしまうほどだった。
 笑って、その背を見つめて。
「シファカちゃん!」
 そしてそのモニカの呼び声を聞いた瞬間、ジンは血の気が引いていくのを感じた。
(……いま、なんて?)
 空耳かと。
 だがモニカは繰り返す。
「ねーシファカちゃーん。ちょっと手伝ってほしいんだけどー」
 息を呑んだ瞬間、まるで針を飲み下したかのような痛みが喉に走った。自分の喉から漏れた、しゃくりあげたような声が聞こえる。舌先が乾いて、瞬きするのも忘れてしまっていた。ただ、視線の先は奥へと呼びかけを繰り返すモニカに、張り付いてしまったままであった。
 ほどなくして、モニカの求めに応じたらしい一人の少女が、奥からひょいと顔を覗かせた。
「あ、丁度いいわ。手伝って欲しいんだけど……」
 モニカの呼び声に従って現れた少女は、ジンの見覚えのない、淡い金の髪に青い瞳をした少女であった。彼女は雑巾が引っかかった桶を片腕に提げ現れた。声を潜めたモニカの説明に対して、その少女は小さく頷いている。
 ジンは乾いて張り付いた口に空気を送り込みながら、胸中で呻いた。
(……違う)
 そう認識した瞬間。
 どっと、汗が噴出す。
「じゃぁ、ジン。食堂で待っててね。終わったら呼びに……どうかした?」
「……あ、いや……」
 こちらの顔色の変化を読み取ったのだろう。モニカはとても人の機微に聡い。彼女は小首をかしげて、大丈夫? と安否を問うてきた。
「う、ん大丈夫。じゃ、待ってるから」
 ジンは早鐘のように音を立てる左の胸を鷲づかみにしながら、微笑んでみせた。取り繕った笑顔は、不自然に映らなかっただろうか。しっとりと汗ばんだ手のひらには、爪が食い込んだあとがある。モニカに軽く手を振ったジンは、鞄を抱えて、食堂の中に足を踏み入れた。
 食事時でなくとも、そこは賑やかだ。酒の入った、遊戯と談話に興じる男たちの喧騒が、ジンの足音と血流の音を消し去る。
 一番奥の席に足早に歩み寄って腰を下ろし、その手のひらで、顔を拭った。
 まだ、心臓の音がする。
 シファカ。
 よくある名前なのか。どうなのか。少なくとも、自分はたった一度しかその名前に出逢ったことがない。第三者によって紡がれるその音が、ここまで凶暴に自分の理性をかき乱すものだとはさすがに知らなかった。
 そこまで、その音が。
 侵食しているなんて。
『ジン』
 声が、蘇る。
 声が、質感が、匂いが、感触が、色が、形が。
 まざまざとした触感を伴って、腕の中に蘇る。
 抱きしめたことがある。口付けたことがある。そのときの涙の色も、歪んだ顔も、唇の柔らかさも、背中に回された腕の力加減も、零れた吐息の熱さも、潤んだ眼差しも、全て覚えている。
 それを、突き放したのは、自分。
 手を、放したのは、自分。
 なのに、それを何時までも引きずって、幻を繰り返し掻き抱いているのも、自分。
 間を置いてジンは茶を用意して現れた少年に、鞄を預かるように頼んだ。
 そうして、青龍刀と防寒具だけをもって、立ち上がった。既に誰もいなくなった玄関の広間を通り抜けて、外へと飛び出す。吹雪はまだやむ気配を見せず、白い世界は残酷なまでの優しさを見せてジンを迎え入れた。
 ぼすり、と積もった雪の中に、身を横たえる。夢の中で、童女がそうしていたように。
 凍てつくような冷気に、飛び込んで、文字通り頭を少し冷やさないと。
 本当に、発狂してしまいそうだった。


「どうしたのかしらねー?」
 食堂へと消えていく男の背中を眺めながら首を傾げていたモニカは、少女と顔を見合わせた。金髪碧眼の少女は、滞在している商隊の一員であり、モニカの忙しさを見かねて今朝から手伝いを申し出てくれていた。雑巾を持っているのも丁度いい。あの埃だらけの屋根裏部屋の、拭き掃除を行ってもらおう。モニカはそう決めた。
「御免遅くなって」
「シファカちゃん」
 少女の背後から、もう一人娘が顔をだした。短い黒髪と紫金の瞳。いうまでもなく、シファカである。彼女は頬を紅潮させていて、どうやら洗濯場から走ってきたらしかった。急がせて、悪かったと思う。
「御免。今から二人で屋根裏の拭き掃除、行ってくれない? 急にもう一人、お客がくることになったの」
「え? 突然だねぇ」
「でしょう?」
 馬鹿王子もいい加減唯我独尊であるが、ジンもそれに負けず劣らず、わが道を行く人だ。モニカは呆れ笑いを浮かべながらシファカに同意した。
「まぁとにかく、先に屋根裏部屋で待ってて。道具とって私も直ぐ行くから。とりあえず、寝台だけでもどうにかしないと」
「あ、じゃぁ私毛布とってくるよ」
「お願い」
 そう申し出るシファカに、モニカはありがたく依頼する。そして手を振って彼女と商隊の少女をそれぞれの方向へ送り出した後、モニカ自身も道具を取りに向かうべく、踵を返した。


BACK/TOP/NEXT