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第一章 旅人と剣士 4


「お、お前何やってんだ?!」
 シファカたちが鍛冶場にたどり着いた矢先、そう叫んだナドゥの目には、シファカではなく自分を背中に負う男の顔が捕らえられていた。
 鍛冶場の衆も皆、目を丸めているが、それは自分とこの男の組み合わせに驚いているようであって、男の存在自体には驚いていないようだった。彼を通り越して労わりの声をかけてくる見知った顔。痛みで上手く声が出せないシファカの代わりに、男が軽く彼らをあしらって、迷いない足取りで奥へと進んでいった。
「お遣いのお手伝いだよ?」
 後を追ってくるナドゥに、男がのんびり答えた。
「じっちゃん。救急箱どこだっけ。卵と小麦粉とお酢ある? 出来ればキワダ粉欲しいんだけど、誰かに買ってきてもらえないかな。この前薬屋で見たから。あと綿の布頂戴。着替えも」
「おいおい一気にいうな。ちょ、ちょっと待って」
 ナドゥは救急箱を男に押し付け、卵とかはお前が用意しろといって鍛冶場にとってかえす。
「キワダ粉ぉ!」
「今買いに行かせるから待ってろ!」
 がしゃん、という何かをひっくり返す音と、いてぇ、という悲鳴。ナドゥらしくない。ぼんやりとした意識の向こうで思う。
 結局。
 一人で歩き出そうとしたものの、鈍痛が酷くて動けなくなってしまった自分を、彼は軽々と背中に負ってここまで歩いてきた。足取りは速く、けれども震動が少ないように気をつけられてもいた。実は正直言ってしまえば、ここにたどり着いてナドゥの叫びを聞くまで、シファカは眠ってしまっていたのだ。情けない、と胸中で毒づくが、それと同時に泥のように眠ってしまいたいという欲求がシファカを支配していた。この場所が良く見知ったナドゥの住居であると思ってしまえばなおさらであった。実を言えばロタと同じように、ここ最近ろくろく自分は睡眠をとっていない。
(エイネイに反論できないな……次)
 胸中で苦笑していると、寝台に下ろされて、ゆっくりと横たえられた。
上半身を何とか起こす。男は床に膝をついて、救急箱の中身をあさっていた。立ち上がった彼は、まるでここが自分の家であるかのように、慣れた様子であっちへうろうろ、こっちへうろうろしている。シファカが下ろされたのはナドゥの、今はもういない子息の部屋だった。綺麗に整えられてはいるが、生活の跡がある。
「……一体、誰なんだ?あんた」
 助けてもらったことの感謝より、うさんくささが胸を占める。失礼を承知しながら、かすれた声で、思わずシファカはそう尋ねていた。
「俺この家の居候」
 男が手ぬぐいを腕に抱え、立ち上がりながら即答してきた。シファカは驚愕に息を呑んだ。この家に居候がいるなんて。そんな存在見たこともなければ聞いたこともない。
 居候!
 あの、偏屈で通っているナドゥが。
「今は動かないほうがいいよ。ちょっと怪我みるから、横になって」
 静かな物言いだが、強制力がある。納得はいかないが、理由が理由だった。言われた通り、シファカは身体を寝台の上に横たえた。
 衣服の上から、簡単に腹部を触れてくる。そして、手首、足首。何かを確認したように頷くと、彼は広げた毛布をシファカの上にかけた。前もって脱がされていたシファカの外套は壁に吊られる。
 シファカは、眉間に皺を刻んだまま彼の動きを追った。
 部屋の戸布の前で振り返った彼が、ふと、柔らかく微笑んでくる。
「すぐ戻ってくるから、ちょっと寝てて」
 不思議なことである。
 どんな風に同僚が言っても、エイネイやアムネーゼ、他の女官たちが口をすっぱくして勧告しても、眠りたくなるようなことはこれまで無かった。今、気を抜いて休むべきではない。日に日にきな臭くなっていく周囲に、体が自然と緊張して、夜の眠りでさえとても浅い。
 だというのに、どうしたことか。ほんの一言言われただけだ。だが疲労感がどっと体を覆いつくした。睡魔が手招きしているようにさえ思える。
 実際、自分がいつ眠りに陥ったのか、シファカには記憶がなかった。


 夢を見る。
 幼い頃の夢を。
 砂吹き荒れる荒野。不毛の土地で繰り返される流血の茶番劇を。
『…………大丈夫か?』
 大好きな手のひらが頬に触れるのに、それがとても冷たいの。
 とってもとっても冷たいの。
 ねぇ、どうして。
『生きろ』
 彼はそういって手を握った。どんどん冷えていく手。震えから歯を鳴らしながら、ただ自分はその手を握り締めることしかできなかった。
 周囲を支配するのは鉄の臭いだ。自分の足元には、赤い色が褐色の大地に染み込みきらずに溜まりをつくっている。
『生きろ』
 静かに首を振った。
 いやだ。
 しなないで。
『……いきて……』
 ずっと、赤い色を伴った、白い鋼が父の身体から引き抜かれる。
 ただ震えて、その刃を父の体から引き抜いた黒い覆面を見上げた。
 風が吹いて、白い空を一瞬だけ蒼空に塗り替えていったのだ。
『お前のせいで……!』
 茶番劇から帰った自分を迎えた声。

 あぁ、誰か教えて。
 私は、生まれてきたことが間違いでしたか。
 この不毛の土地で、生をうけたからこそ、たくさんの犠牲を払っていかなければならなかったのですか。
 ねえ。
 お母さま。

『お姉さま』

 そうやって微笑む妹の姿は、母にとてもよく似ている。


「…………っは……は…………え?」
 見知ってはいるが、いつも目覚めたあと視界に飛び込んでくるはずのものとは違った天井が、そこにある。
 呼吸を整え、シファカは頬を濡らしていた何かを拭った。見ていた内容は忘れたが、とても辛い夢を見ていた気がする。ずきりと痛む頭を押さえつつ、シファカは周囲を見回した。
 基本的にどの家もそうであるが、部屋の内装は簡素だ。寝台と衣装箪笥、書き物机だけの部屋。窓は開け放たれていて、夕方の涼しい風を送り込んでくる。眩しい西日が部屋に差し込んでいて美しい。眩しさに目を細めていると、すっきりとした頭に現在の状況が鮮烈に浮かび上がった。
(……私の馬鹿……!)
 がば、と毛布を跳ね除けながら上半身を起こす。と、ほとんど下着の状態であることにシファカは気がついた。ぎょっと目を剥きながら寝台に戻り、毛布に包まって、シファカは指で身体の怪我の具合を確認した。
 腹部には広い布が張られ、包帯で固定されている。足首も同様で、先日の負傷のための包帯も新しいものに替えてある。つん、と、かぎなれない臭いが鼻についた。
「あー起きた?」
 声につられてシファカが目をむけた先には、戸布を上げて、あの男が立っていた。深い紺の長衣に白い下の服を身につけて。腕には新しい衣服。黒みがかった深い赤の衣装だ。綺麗な色だなぁと眺めていると、その衣装を手にしたまま男がゆっくり歩み寄ってきた。
 条件反射で、つい後退[あとず]さる。手元に剣がなくて落ち着かない。シファカが背中を壁につけたところで、男が苦笑した。
「そんなに警戒しないで。襲ったりしないから。ちょっとじっとして、怪我を見せて欲しい。とりあえず、お腹の」
「……あんた医者なのか?」
「ううん。医者の真似事ができるだけ。難しいことはできないよ。ちょっとその腹部の包帯といてくれる? 俺に触られるの嫌でしょ?」
 それとも俺がやろうか? と意地悪げにいわれれば、自分で解いていくしかなかった。医者でもない男の前で肌をさらしていくというのは妙な話だった。だいたい何故自分はこんなまだ名前も知らぬ男のいうことに素直に従っていたりするのだろう。自分自身への憤りを、八つ当たり気味に視線にのせて男へ送る。目を合わせた男は、苦笑いに顔を歪めたものの、すぐに真剣な面持ちになってシファカの薄い腹部を確認した。
 布が解けたことで、臭いが更にきつくなる。肌にこびりついていた布をはがすと、ぱらぱらと土のようなものがシファカの膝に零れ落ちた。腹部にこびりついたそれが、臭いの元だ。
「寝台から下りられる? 床の上で湿布薬を払い落としてくれる?」
「……湿布薬?」
「その黄土色の土みたいなの。ごめんね。寝ている間に塗ったんだ」
(これを、寝ている間に?)
 寝台からそろりと降りて、腹部を見やる。こびりついている黄土色のそれは、ぱりぱりに乾いて、泥を塗りつけた後のようだった。いわれた通りに床の上で全て払い落とすと、色の変色した肌が覗く。鬱血していた。
「腫れは引いたけど、しばらく痛むね。呼吸は大丈夫? 痛くない?」
「……平気」
 急に動くと少し引き攣れた感はあるが、普通に呼吸するぶんには全く問題はない。男は微笑み、寝台の傍らに抱えていた衣服を置いた。箪笥の上に置かれていた水差しから、とろりとした液体を高杯に注ぎ、シファカに差し出してくる。
「これを呑んで待ってて。今からお湯と手ぬぐいとって来るから、それで体を綺麗に一度拭いて、そうしたらそれに着替えてね。俺じっちゃんと下で待ってるから」
「それって……これ?」
 ちらりと傍らの赤い衣装に目をむける。こんな色目のもの身につけたことが無い。ナドゥのものではないことは確かだ。てっきり、この男のものだと思って――いや事実そうなのだろう。けれどもこの男の身の丈のものを、自分が身につけたら酷く不恰好どころではないと思うのだが。目の前に立つ男は、細身に見えて意外に肩幅が、広い。
 シファカのわずかな狼狽を、男は気がついたのだろうか。怪訝そうな顔で、彼はあっさりと頷く。
「そうだけど? 大丈夫だよ似合うと思う。じゃぁお湯持ってくるからちょっとまってて――その薬はきちんと飲んでね」
「あ、ちょっと」
「すぐ戻るから――」
 こちらが引き止めているというのに、さっさと男は身を翻して行ってしまう。人の話を聞かない男だ。むかっ腹を抱えたシファカは手渡された液体を睨みつけ、酒を呷る気分で一気にそれを飲み下し。
「…………苦」
 あまりの苦さに、うっかり卒倒するところだった。
 その後、お湯を携え戻ってきた男は、てきぱきと用意を整えると、さっさと再び退室してしまった。その素早さといったら、声をかける間もないぐらいだ。足音が遠ざかり、周囲に気配がなくなったことを確認して、言われた通りに体を清めにかかる。体に塗りたくられている『湿布薬』とやらの臭いはすさまじく、肌にこびり付いたそれをさっさと落としてしまわなければ嗅覚が完全に麻痺してしまいかねない。慣れない臭いを、さっさと払ってしまいたかったのが、正直なところであった。
 手の甲に、血か何かで奇妙な文様が描かれていた。眉をひそめて手ぬぐいで擦る。それはすぐに水に滲んで消えた。
 体を清め終わり、衣服を着る段になって、シファカは驚愕してしまった。
(女物の服だ)
 触れて初めて判ったのだが、男が用意してきたそれは、女物の衣装だった。しかも真新しいらしい。一体どこからこんなものを調達してきたのだろう。いや市場からであるのだろうが。
 見立てはよく、身の丈も設えたようにぴったりだった。だが身につけることに躊躇があった。こんな女物の服、まともに身につけたことが実は一度も無いのだ。
(ど、どうやって着るんだろ。コレ)
 男物と同じ、貫頭衣の上と、ゆったりとした下で構成されているだけなのに、混乱の極みにあったシファカは、赤の上と白の下を床に並べて、本気で悩んだのだった。


「シファカ」
 階段を下りると、いつもの居間だ。飾られた、幼い頃の自分が描いた絵と、窓枠にかかった金風鈴。食卓の席にはナドゥが着いていて、心配そうに顔をゆがめていた。
「大丈夫か気分は?」
「うん。大丈夫……えっと」
 シファカの姿を認めたナドゥが、目をわずかに瞠ったのが判ってしまった。足早に席について、身を縮ませる。だからこんな服、着たくはなかったんだ。シファカは胸中で呻いた。が、さすがに下着でうろつく訳にもいかない。
 ナドゥが口をぱくぱく動かしている。お願いだから何も言わないで欲しい。こんな女物、似あわないことは判りきっているのだ。
「あーお疲れ様」
 ひょい、と奥から男が茶瓶をもって現れる。シファカが面を上げるよりも早く、ナドゥの声が耳に滑り込んだ。
「ジン」
「はいはい。今高杯持ってくるから待っててよ」
 ことんと茶瓶を卓の中心に置いて、男は一度台所にとって返す。またすぐに戻ってきた彼は、二つ高杯をもって、席に着いた。
 手馴れた手つきで高杯に琥珀の液体を注ぎ、彼はその高杯をまずシファカのほうへと滑らした。
「はい。甘くて美味しいよ。薬苦かったでしょ」
「倒れるかと思った」
「やっぱりねぇ」
 あははと笑う男を、横目でナドゥが睨み据える。
「お前シファカに何飲ませやがったんだ?」
「だぁから、お薬だって。じっちゃんもさっき見てたでしょ? 俺が作るの。呑みたければ作って上げるよぉじっちゃん。思いっきり苦いけど」
「遠慮するにきまっとるだろうが阿呆! 大体お前はなんなんだ医者か料理屋かちんどん屋か?!」
「全部違うよあはは」
「なぁ……」
 自分を置き去りにして進められる会話に苛立ちを覚えながらシファカは呻いた。ナドゥがこんな風に自分から職人とシファカ以外に口を利くことも珍しいのだ。その相手の男に視線を送りつつ、体をナドゥのほうへと向けて、言葉を続ける。
「一体……」
 それだけでシファカが何を言おうとしているのか判ったのだろう。ナドゥが盛大に溜息を一つついて、シファカに答える。
「この間の買い付けのときに荒野で拾ったんだ。昨日紹介していなくて悪かったシファカ」
「ジンっていうんだ。よろしくねぇシファカちゃん」
「ジン! お前だからそうやって軽々しく名前を呼びやがってこの野郎」
「えーいいじゃんシファカちゃんなんにもいってないじゃん」
 突然、ジンと名乗った男に突然両手をとられて、シファカは閉口していた。呆気にとられるこちらに、彼は笑顔で同意を求めてくる。
「いいよね。ねー。あ、ちなみにシファカちゃん俺のこと呼び捨てでいいんでぇ」
「こんな軽口男に名前を呼んでやる必要はないぞシファカ。お前、でいい。もしくはこれそれあれどれ」
「じっちゃん代名詞はちょおおおっと、やめて欲しいカモ……」
「ちょ、手、放せ!」
 ぶん、と手を振り払うと、男はあっさり両手をあげて引き下がった。からかわれている。そう思うとカチンとなる。思わずシファカは立ち上がって、冷ややかに男を見下ろしていた。
「……助けてくれたことは礼をいうけれど、あの書簡はどうしたんだ?」
「じっちゃんに渡したよ」
 即答されて、シファカは視線をナドゥの元へと移した。ナドゥが首を小さく縦に振って、ジンに同意を示す。
 すとんと腰を下ろして、シファカはため息をついた。
「……ロタから仕事の依頼を代行しに来たんだけど」
 ぐ、と衣服の裾を握り締めてシファカは低く呻いた。情けなさに涙が出そうだ。大体どうしてあんなにあっさり眠ってしまえたのかが判らない。気を許していない人前では、眠らないように訓練もされているのに。
 言葉の続きを吐こうと口を開いたところで、ナドゥが微笑んでいってくる。
「あぁそれなら、別の遣いがきたぞ。お前が昼を回っても戻ってこんから、皇太子妃が心配したらしい。まったくこの老いぼれに次から次へと仕事を持ってきやがって。武器はもう少し丁寧に扱え」
「……御免。ナドゥ」
「あ、いやお前のことじゃなくてな」
 何かをナドゥが慌てて取り繕っているが、上手くシファカの耳に入ってこない。
(馬鹿みたい)
 どんなに肩書きをもらっても、それに見合うだけの力をつけたつもりになっても。
結局は仕事一つも完遂できないし、心配をさせているし。
『……あんたなんか……!』
 結局、自分は必要なくても世界は動く。
 そういうことなのだろう。
 知れず嘆息を零しながら、シファカは立ち上がった。唐突に立ち上がったためか、ナドゥが目を丸めている。とりあえず笑顔を取り繕って、シファカは口を開いた。
「……帰るよ。日が暮れちゃうし。仕事があるんだ。剣はどこ? ナドゥ」
「あ? あぁ……剣はたしかあっちに……いやシファカ、でもお前今日はこっちで休んだほうが」
「帰る。剣はどこ?」
「ここ」
 いつの間にか席を離れていたらしいジンが、奥からシファカが借り受けている剣を持って現れた。
 歩み寄ってその剣へ手を伸ばす。が、剣はシファカの眼前で、ひょい、と高く掲げられてしまった。
 シファカはさらに苛立ちを募らせて、搾り出すようにして彼に尋ねた。
「……何がしたいんだ?」
「この剣、君には合ってないよ。手首を傷める。それに、今日は休んでいったほうがいい。いくら内在魔力が高くても、疲労が溜まると怪我は治りにくくなる。うん、っていうまでこの剣は貸し出せないし」
 ならば、とシファカは彼にくるりと背を向けた。別に借り受ける剣はジンが持つものでなくてもいい。が、シファカがナドゥに何か言うよりも先だって、ジンが彼に釘を刺した。
「なんにも渡しちゃ駄目だよ、じっちゃん。この子が可愛いんだったら。下手したらこの子が死んでしまうからね」
 ぴたりと、シファカは歩みを止めた。
 振り返る。男は柔らかく微笑んでシファカを見つめていた。
「……それはどういう意味?」
「そのまんまの意味だよ」
 かたん、と剣を近くに立てかけて、男は優しく、どこか甘いとまで思えるような余韻を含ませて、言葉を続けた。
「剣を扱うのがへたくそなのに、むりに扱っていたら怪我が増えていくばかりだよ。しかもこんな重い剣――無茶が過ぎる。可愛らしく着飾って座っていたほうが、まだどんなにいいか」
「……この服はあてつけのつもり?」
 奥歯をぎり、とかみ鳴らして、シファカは低く呻いた。今シファカが身につけている赤の女物の衣装。柔らかな布地も、それが描き出す曲線も、施されたわずかな、それでいて細やかな文様も、何もかもが鬱陶しい。出来ることならば破り捨ててやりたかったけれども、理性がその行為を押しとどめていた。
 爪が食い込むほどに拳を握り締めて、シファカはジンと対峙した。彼は柔らかに微笑したまま、傍らの剣を鞘から引き抜き、そして近くの花瓶に生けてある長い茎から、すっと花弁が伸びている白い花を一本取り出した。その行動の意図を読み取れず首をかしげているシファカに、彼があごで中庭を示唆した。
「じゃぁためしにちょっと外に出てみようか」


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