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第十五章 会戦前夜 1


 牢獄といえども清掃は行き届いていて、食事もきちんと朝夕と出る。囚人の扱いも悪くはなかった。とはいっても、先日までの扱いを思えば天と地ほどの開きがあるのだが。
 とはいっても、することはあまり変わりない。本を読むか眠るか、そのどちらかだ。
 ごろりと横になったまま、今日も夜明けを待っていると、気配がひとつ格子の外で動いた。
「馬鹿ですか」
 気配の第一声は呆れ混じりにたった一言。イルバが片眉を上げ、気配のほうを振り返ると、そこには表情を消した女がいた。
「シノ」
 怒気さえ感じられるその冷ややかな眼差しに、イルバは慌てて身を起こした。
 が。
「でも、褒めて差し上げます」
 この国の女官長は一転してにやりと口の端を吊り上げる。今度はイルバが呆れ顔で、女を見つめることとなった。
「なんだそりゃぁ。貶すか褒めるかどちらかにしやがれ」
「貶すにも褒めるにも値するから、どちらも口にしているのです。天晴れですわ……陛下を殴るだなんて」
 そういって艶やかに笑う女官長を半眼で見つめながら、イルバは寝台から身を起こした。嘆息し、頭をがりがりと掻いて、のそりと床に足を下ろす。
「殴られたところを見られてたなんてな……」
 シノの前に歩み寄り、イルバは呻いた。
 執務室でラルトのことを殴ったとき、わずかに開いていた扉から文官がことを目撃してしまったらしい。位置的にスクネもレンも見えなかった彼は、慌てて兵士を呼び、結果イルバは反逆の疑いありということで拘束されたのだ。
「お前は大丈夫か? 迷惑、かかってねぇのかよ?」
 イルバをこの国に連れてきたのは他でもないシノだ。自分が拘束されたことで、彼女は責任を問われるのではないかとイルバは気を揉んでいたのである。しかしイルバの懸念を払拭するように、シノは朗らかに笑った。
「大丈夫ですよ。大体報告を上げたのも下級の文官ですし……スクネとレンの証言もありますから、もうとっくの昔に、容疑は晴れております」
「はぁ? そうなのか?」
「大体陛下に反逆するような輩は、拳で殴りかかったりなんてしませんわ。刃物を持って切りかかっているでしょう」
「ま、確かにそりゃそうだろうな。……ちょっと待て。とっくに疑い晴れてんなら、なんで俺はまだ牢屋にぶち込まれたまんまなんだよ」
「それはもちろん、己の軽率さを恥じていただくためですわ」
 しれっとシノは言って、肩をすくめた。
「イルバさんは短気だと前から思っておりましたが、まさか陛下を殴るだなんて。レン達の証言がなければ、本当に拷問にかけられているところでしたのよ。重罪ですから」
「そりゃ……そうだろうな。悪かった」
「本当です。反省してくださいませ」
 子供をしかりつける母親の口調そのもので、シノが口を尖らせイルバを叱責する。何も言い返せずイルバが沈黙していると、彼女は「けれど」と言って忍び笑いを漏らした。
「陛下を殴られる。実に天晴れですわ。素敵です」
「嫌味か」
「褒めているのですよ?」
 イルバの言葉に心外だとでも言いたげに、シノが胸を反らせた。
「陛下を堂々と殴れる人なんて、宰相閣下ぐらいなものでしょう。さすがの私も陛下を殴ることなどできはしません。……ですが最終的にはひっぱたいてでも、送り出さねばならないと思っておりました。それをしてくださって……礼を申し上げますわ」
「……皇帝を殴って礼をいわれるたぁ思っても見なかったぜ。……シノ、そんなんこんなところで堂々と言っていいのかよ?」
 イルバが入れられている独房の隣にも無論、同じ部屋が並んでいる。看守だっているだろう。シノが吐いた言葉は、人前で口にしてよいようなものではないはずだ。
 しかしシノはあくまで余裕の表情を崩さない。彼女は柔和な笑みを浮かべたままで、イルバの言葉に頷いた。
「えぇ。大丈夫です。人払いは済ませてありますので」
「人払い?」
「私のほかに、あなたと会話したいお人がいらっしゃるのですよ」
 シノはそういって、僅かに身を引いた。先ほど彼女が立っていた場所を埋めるように、格子の影からもう一人、男が姿を現す。
「お前」
 イルバは驚きに目を見張りながら、自分を訪問してきた男を見返した。
 黒髪黒目の細面。旅のせいか、疲労の色が目の周りに濃く見える。しかしきちんと背筋を伸ばし、ゆったりと微笑む彼は、それだけで相手を威圧する静かな存在感を放っていた。
「戻ってきてたのか」
「はい。つい先ほど戻ってきました」
 思わず漏れたイルバの呟きを問いと勘違いしたのか、左僕射エイ・カンウは几帳面に言葉を寄越した。


「ばっっっっつかもんがっ……!!!!!!」
 雷が落ちると、人はよくいったものだ。
 ヒノトはめったに聞くことのないリョシュンの怒鳴り声を受け、頭を垂れながらそう思った。普段穏やかなしゃがれ声の老人が、青筋立てて拳を振り回し怒ることは非常に稀だ。リョシュンの付き人をする医師たちもまた彼の剣幕に驚き、恐れ慄いていた。
「まったくお主はもう少し娘なら娘らしく、おとなしくしておれこのじゃじゃ馬め! お主がしたことが一体どんな事態を引き起こしているのか判っておるのか! 陛下が戻られたら、私はこの首をお切りして陛下に献上せねばならん!! なんと申し訳ないことを……!!!」
「あ、の、ごめなさ」
「ごめんなさいですむと、思っているのか!!!」
 思って、いない。
 と否定しようとしたがやめておいた。リョシュンの怒りに油を注いでしまうようなものだ。大体リョシュンに言われなくとも判っている。これでティアレが死ぬようなことがあったなら、自分は彼に言われるまでもなく、自ら進んで首を差し出すだろう――せめて、エイに迷惑がかからぬことを祈りながら。
 リョシュンは周囲に止める隙を与えることなく、一刻ほどの間ひたすらヒノトを説教し続けた。その間、呆れ顔の医師たちは痺れを切らし、部屋の出入りを繰り返している。
 リョシュンがようやく説教の終わりの言葉を部屋の出口を指差しながら叫んだのは、ヒノトの脚が床と同化してしまうのではと思われた頃だった。
「城の中が落ち着いたらそれ相応の罰を陛下に与えていただく! それまで大人しく、部屋で謹慎していなさい!! 一歩も出てはならん!!!」
 すごすごとリョシュンの部屋を退出し、疲労に気だるい身体を引きずりながら、ヒノトはエイの書斎へ向かった。
 リョシュンのいう部屋とは、エイの屋敷の中にあるヒノトの部屋のことだ。城に来ることもまかりならないという彼の意思は汲み取れるが、明言されたわけではない。疲労している身体を引きずって、一人屋敷へ戻りたくはなかった。エイの書斎の奥に、いまやヒノトの部屋と化している小さな仮眠室がある。そちらで謹慎していようと、思ったのだ。
 ダッシリナからようやっとブルークリッカァの宮城に戻ってきて、エイは休む間もなくどこかへ出かけていった。留守中の仕事の処理も無論あるだろうし、デルマ地方が物騒なことになっているせいもあるだろう。ヒノトがダッシリナにいる間に兵士たちの何割かは、かの地方に向けて出陣したのだと女官たちが噂をしていた。
 見張りの衛兵に挨拶をして、エイの書斎にヒノトは足を踏み入れた。薄暗い部屋に鎮座する机には、処理を待つ書類が積み上げられている。その脇をすり抜けて、奥の部屋へと急ぐ。
 仮眠室に置かれた寝台に、ヒノトは半ば倒れこむようにして横になった。
 静かな部屋は物音ひとつしない。身体は疲れているのに、意識が妙に冴えている。硬く目を閉じてみたが、眠れない。気が高ぶっているのだろう。
 眠れるはずがない。自分ひとりが城に戻ってきたが、ことは何も解決していないのだから。
 リョシュンにいわれなくとも、それぐらいは判っている。
 目を閉じたまま、やがて一刻がすぎ、二刻が過ぎ、朝を迎えても眠れない。
 ヒノトはふと思い立って、もそりと寝台から起き上がり、戸棚の奥にしまってあった小さな箱を引き出した。埃を吹き飛ばして軽く叩いたあと、蓋を開ける。そこにあるのは他のものが見れば捨ててしまうようなガラクタだ。ヒノトとかつて共に暮らしていた、孤児たちの遺品である。
 その中に、小さな巻物が入っている。
 赤黒い染みによって所々汚れたそれは、養母であるリヒトが死の間際まで書いていた処方箋だった。月光草の解毒剤が作り出された後、処方箋はエイの手を経由してヒノトのもとに戻ってきたのだ。
 それは、処方箋がリヒトの形見であるという理由からではない。ヒノトでなければ、処方箋の意味を理解できないだろうという考えからだった。
 処方箋には、月光草の解毒について以上の走り書きがなされていた。それが一体何を意味するのか誰もわからない。ほとんどがリファルナ原産の薬草に関してばかりで、ブルークリッカァの医師団は理解することができないらしい。
 エイ曰く、処方箋は当の昔に完成していた。リヒトは、逃げようと思えば逃げられるはずだったのだ。
 それよりも研究を選んで、なぜあの小屋に留まったのか。そこには誰かを生かすための、意味があったのだとヒノトは信じている。リヒトは医者だった。人を生かすために命を捧げた薬師だった。
 彼女が医師として行ったすべてに、無駄はなかったのだと。
「誰かのためを思ってしても、無駄になることは、あるものじゃなぁ、リヒト」
 この処方箋に書かれた無駄な走り書きは、リヒトにとっては意味があったのだろう。しかし誰もそれを理解することができない。誰も生かさない――逆に、リヒトたちは死んでしまった。
 ヒノトの思いつきは、ティアレのためを思ってしたことだった。その思いに間違いはなかった。しかし結果、シファカという人間を巻き込み、ティアレを死の淵にさらしている。ラルトを苦悩させ、リョシュンやエイに迷惑をかけている。
 ヒノトは処方箋を胸に抱いたまま、寝台の上でひざを抱えた。そのまま、まっすぐ暗闇を見つめる。
 そこに、死に逝く人々の顔が浮かんでは消えて、結局ヒノトは、眠りにつくことができなかった。


「ハルマ・トルマで皇后陛下と共に確認された男に相違ないでしょう」
 早朝、左僕射の執務室に招かれたイルバは、この部屋の主によって追っていた男について報告を受けていた。
「シルキス・ルスは名前を変えてダッシリナに――正確に言えば、盟主の甥である、ソンジュ・ヨンタバルに仕官していました。ここ半年ほどのことです。詳細を聞きますか?」
「いや、詳細なんざどうだっていい。重要なのは、今だろ?」
 七年――もうすぐ、八年になるか。当の昔に袂を分った弟子が何を思って仕官したかなどどうでもいい。今、彼がどこでどうしているのかが問題なのだ。
 エイは微笑み、報告書と思しき書類に視線を落として話を続けた。
「つい先日、ダッシリナの盟主に対して謀反を起こしました。私がダッシリナに向かう少し前ですね。その後、ソンジュ・ヨンタバル、共に仕官していたリアス・ラヴィアと共に姿を消して、最後に目撃されたのがハルマ・トルマ。民衆を陽動し、ハルマ・トルマの独立を宣言しましたよ。現在、こちらに向けて移動中です」
「こちらに向けて移動中……? この都に向かってるっつうことかよ」
「そういうことですね。彼ら曰く、彼らがしていることは革命ではない。……独立を目的とした、全うな交渉のようですから」
「皇后を人質にとった、一方的な交渉だがな」
 イルバは毒づいて長椅子の背に重心を移した。
「シルキスのやつは一体、何をしようっつうんだ? そのソンジュってやつに報いるためか?」
「どうでしょうね。けれど報いるためでしたら、もっと違う方法があるはずです。それこそ盟主に謀反などせず、もっと堅実に、地位を永久の物とするような方法を取られるでしょう」
「そうだな。……なんつうか、投げやりだもんな。ハルマ・トルマはすでにブルークリッカァとダッシリナの間で片が付いているこったもんな。それを引っ掻き回したところでややこしくなるだけだ」
 そのようなことをすれば、ソンジュの立場がさらに危うくなる。仕える主に報いるためだとすれば、そんなことはしないだろう。
「シルキス・ルスは同じような手順で、革命まがいのことを、あちこちの国や地域で繰り返しています」
 やや置いて、エイが口を開いた。
「今回もその一環のように思えます。なぜ、そんなことをしているのでしょうか? お判りになられますか?」
「さてな……」
 顎をしゃくりながら、イルバは呻いた。意味のない、民主化への革命。シルキスはそれを繰り返す。何度も、何度も。
「検算、みたいだよな」
「けんざん?」
 イルバの言葉の意味をうまく汲み取れなかったらしい。エイが怪訝そうに首を傾げるのを見て、イルバは身体を起こした。たとえば、と解説する。
「俺は数学者じゃねぇんでうまく説明できねぇかもしれねぇが、物事を証明して答えを出したとき、数学者はそれが間違いじゃねぇか、何度も何度も、飽きるぐらいに、同じ方程式を計算しなおすだろ」
「……はい。あぁ、検算ですか」
「そう。検算。なんかあれだ。シルキスのやつは、研究の末に、革命がひとつの方法だと行き着いた。それが正しいのかどうか、何度も何度も試している。……もう、間違っていると判ってんのに」
 判っているだろうに。
 バヌアが崩壊した日に。
 王などいらない。頂点など要らない。民が自ら国を治める。
 そんなもの、夢物語だと。
 知っているのに、無駄を繰り返すその意味を、イルバは口にしかけてやめた。
「それはそうと、やつのお目当てだろう、肝心の皇帝は今ここにはいないだろ?」
 ラルトはあれから、馬一頭と共に姿を消している。ハルマ・トルマへと向かったのだろうというのがこちら側の見解だった。護衛も誰もつけずに大丈夫なのかというイルバの心配をよそに、シノもエイも楽観的だ。彼女ら曰く、皇帝を殺すには、暗殺者を一大隊向かわせなければならないと。
「つうことは、やつと交渉するのはお前か? 宰相は不在だっていうし……」
 そのラルト以外で交渉に当たれる人物は、やはり目の前の左僕射しかいないのであろう。イルバはまだこの国の政治決定権について詳しく把握はしていない。しかし最終的な決定を下せるのは皇帝か宰相。彼らが不在となれば、次ぐ権力者の左僕射、つまり目の前のエイとなる。
「そうですね。私も交渉に当たります」
 一拍置いて、彼は続けた。
「交渉の席には、貴方についていただきますよ」
 それは、決定事項なのだろう。
 エイの言葉にはよどみがない。膝の上で手を組み、悠然と微笑む年下の男に、イルバは驚愕の眼差しを向けた。
「……は? マジか?」
「はい。最初にお約束いたしました。この場に留まり、陛下の目付け役を貴方が引き受ける。その代わりに、私は貴方が弟子の方と相対する、しかるべき席は設ける、と」
 皇帝の目付け役は引き受けるも何も、決定事項として強引に推し進められたような気もするが――それを口にすることをぐっと堪えた。
 それよりも気になることがある。
「俺をどうやってその場に置くんだ? 相手も馬鹿正直に独立のための文書持ってやってくるんだろ? 非公式じゃない正式な面会として。けっこう大掛かりな独立宣言だったらしいじゃねぇか。大臣たちの耳にも届いてるだろうが。そんな席に、一介の客人にしかすぎねぇ俺がいていいのかよ」
 シルキスは単なる謀反人だ。しかし正式な使者として要望を文章に起こし、こちらに向かっているのだろう。こちらに向かっているというエイの言葉からも察することができるように、一足早くあちら側からの使者が到着したに違いない。
 正式に申し入れのある要望を無碍にすることはできない。水の帝国が、慈悲ある賢君によって支えられる国として、名声を手に入れている以上は。
「一介の客人にいていただいては困ります」
 エイは短くイルバに応じる。イルバはその言葉の裏を嗅ぎ取って、顔をしかめた。
「じゃぁ俺は何になるっつうんだ?」
 エイは話が早いと、顔をほころばせる。
「幸い、右僕射の地位が空いておりますので」
「……マジかよ」
 イルバは思わず顔を手で覆って天井を仰いだ。歴史感じさせる、美しい絵柄が刻み込まれた天井を。
「そんなに簡単になれんのかよ」
「貴方は経歴、素性、共に申し分ありません。陛下との面会もすでに幾度も済ませておいでで。私の部下ということにしてもよいのですが、すでに満席なんです。空席のない場所に強引に人をねじ込むよりも、かねてより空いていた席に人一人を置いたほうが、手続きや面倒が少なくてすみます」
「……てめぇ、最初からそれを狙ってたな? 皇帝は単に客人と面会しているだけ。俺は皇帝の話し相手。そして蓋を開ければ、右僕射候補との面接だったつう筋書きだ。今回、ハルマ・トルマからやってくる独立の使者をどうあしらうか。右僕射就任の最終試験っていうことにすりゃ、俺がいても問題はねぇし、ことが終わった後に外すのも簡単だ。試験には合格しなかったということにすりゃいい」
 左僕射はイルバの言葉に是とも否とも答えず、微笑んだままだった。年若く、人の良さばかりが目立つ青年。けれどこの年で国の中枢にいるというのは決して伊達ではないのだということを思い知らされる。
 政治において天才と呼ばれる皇帝。皇帝を支え続けた同じく天才である宰相。
 そして、宰相が不在の間、皇帝の下、手となり足となり、時には耳や目となって、この国を支え続ける左僕射。彼もまた非凡な人間なのだ。
「私も、こんな筋書きを最初から想定していたわけではありません。皇后陛下がこんな風に人質となることも、デルマ地方がハルマ・トルマを中心に独立の動きを見せることも、意識の隅になかったとはいえませんが、それでも現実に起こるとは到底思っていなかった」
 エイは静かに切り出した。
「ただ、シルキス・ルスという人間が身分の高い人間に匿われている可能性は高かった。そうすると、貴方に席をお約束した以上、貴方が大きな表舞台にも裏舞台にも、どちらにでも立っていただけるようにしておくことは非常に重要だと思ったのです」
「……なるほどな」
「引き受けて、いただけますね?」
 脅迫めいた念押しに苦笑しつつ、イルバは頷いた。
「そちらにその覚悟があるのなら」
 シルキスとの相対。それは元々こちらが頼んだものだ。
 しかし自分をそんな大事な局面に据え置いて、後悔されても困る。義理だけで国が成り立っていけるわけでもあるまい。自分は部外者だ。自分とシルキスとの関係は、この国とはまったく関係のない私怨でしかない。
 それでも自分を置くというのなら。
 イルバは微笑んで言った。
「喜んでその好意に報いよう」


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