第十章 今でも愛するその人が 4
黒ずんだ石畳の上に、自分の血と砕いた真珠と銀粉と膠を混ぜたもので陣を描く。
支柱は憎悪。代価は己が血脈。
恨みをここに吐いて、自分はこの土地に君臨する。
自分に残された最後のもの。愛した女の血が染み付いた、哀しい場所と虚ろな水の土地に。
自分は君臨する。
受け入れるものは弾かれた者たち。神の姿に程遠く、疎まれた黒髪の一族を、呪われたこの土地に招きいれる。けれど娶るのはもっとも憎い男の娘だという。運命の皮肉を、口角を曲げて嘲笑う。
この豊かな水を血で濁して、世界の覇者から遠ざける。
一族全ての血をかけて、自分は世界に復讐しよう。
魔女はそれを嗤うだろう。
それでも自分はどこまでも愚かであるだろう。
血で描いたその陣は、わずかに発光し染み込んで消える。
冷たく黒い石畳には、血の臭いだけが残される。
そうしてこの国には呪いが残った。
シノは、心底身体が冷えていくのを感じていた。
「シノ様!」
横で侍女たちが青ざめている。ラナもまた、蒼白な顔をして他の女官たちと手を取り合っている。シノは一人沈黙を守り、煙を上げて沈没した大地を遠く見つめていた。
小高い丘の上にあった魔女の祭壇は、唐突に爆発しそのまま周辺の大地を巻き込んで陥没してしまった。あの薄汚い外套をまとった男を止めに途中まで階段を上っていた衛兵、広場に集まっている観衆、来賓、誰もが、起こった事態が飲み込めず、群青の空へ吸い込まれていく粉塵を見つめている。
これが。
(これが、貴方の選んだ道だというのか)
シノは来賓席へと視線を移した。目的の人物は姿が見えない。
シノは息を吐いた。眉間にしわを寄せながら、とりあえず今ある事態に対応すべく、この早鐘のようになる心臓をどうにかしなければならなかった。
三年前のつけを、払うために。
「ラナ、お客様方を遠ざけなさい」
呼吸を落ち着けながら、シノは傍らのラナへと言った。
「……シノさま?」
「安全に。粗相のないように。他の子たちにも伝えて。何も不安はないと、広場に集まっている一般の方々にも伝えて。この広場を下りるように言って。迎賓館に、気分を落ち着かせるお茶を用意するのよ。医師団の手伝いをする子も集めて」
怪訝そうに表情を固めている女官に、シノは念押しする。
「いいわねラナ」
「か、かしこまりました」
来賓席では避難が始まっている。黒髪の見慣れない若い男が兵士長と二人で指揮に当たっていた。目が合って、一礼される。シノは目礼だけを返し、再び、粉塵の上がる祭壇を睨み据えた。
低く、呻く。
「これが……これが、貴方の答えだなどと、私は決して認めない……!」
「シノ様? し、え……ど、どこへ行かれるのですか?」
震える拳を握り締め、裾を
けれど立ち止まっている暇はなかった。
一歩間違えば、自分はまた、何かを失ってしまう。
放して、と。
それすらも言うことが出来なかった。
言ったところで話が通用しそうに見えなかった。自分を抱えて――正確には、捕まえて、と述べるべきだろう――薄暗い地下道を移動する男は、もはや男ではなかったから。
肉に埋もれるようにしてある顔は、見知ったものだった。ずいぶん痩せて、眼窩が落ち窪んで黒かった。だが、あの顔は、忘れたくても忘れないだろう。
一月ほど、毎夜組み敷かれた。
「シンバ・セト……」
かつて殺されると怯えて、自分をラルトに差し出した男が、人から人ではないものに変化するさまを、ティアレは目の当たりにした。
もともと小柄だった男の身の丈は、人の倍以上に変化していた。皮膚がただれたように赤い。人相はかろうじて元の男のそれをとどめているが、瞳はどろりと濁って、せわしなく動いている。爬虫類の瞳のように。
ぼろぼろになった衣服を引っ掛けている足は折れ曲がり、ぺたぺたと、けれど驚くほど敏捷に動いていた。人間というよりは、荒れた土地に出没するという鬼畜の類に似ていた。
そして、自分を絡めとっている腕とも触手ともつかぬもの。
通路は湿って薄暗く、けれども空気は澱んでいなかった。風が吹いていた。その風上に向かって、シンバ・セトは、自分を運んでいる。
解けた髪が風に流れる。その先にある、沈黙。硬く目を閉じ、唇を噛み締め、ティアレは自問する。
何が、起こっているの。
自分が、魔力を暴走させた。暴走させて、爆発させた。まだそれはいい。自分で判っているから。だがこの、自分を運んでいるかつての所有者は、一体どうしてしまったというのだろう。
ティアレ自身が内包する魔力のせいだとは思いがたかった。男が変化を始めたのは、魔力が暴走する前だったからだ。
ラルトは無事なのだろうか、どうなのだろうか。あの拝殿に居た人々は、自分の魔力の暴走に巻き込まれて、命を落としてはいないだろうか。
『神殺しの魔女が――』
高らかに響いたこの男の声を、あの場所に居たものたちは聞かなかったはずがない。
自分の生死に頓着は無い。だがあの叫びを聞いて、民衆はティアレがラルトの隣に侍ることを許さないだろう。
それがどうしようもなく哀しい。
ふと、明るい光が背後に漏れていることに気がついて、ティアレは背後を省みた。進行方向であるその先に、光がある。一条の光はやがて膨れ、そしてティアレの視界を満たした。
「つ……」
冷たい風に頬を撫でられ、ラルトは体を起こした。
面を上げると、周囲に人だかりが出来ていた。
「……か、………たいところは……か。……ですか? 陛下!」
「……大丈夫だから、耳元で叫ぶのはやめろ。頭に響く」
聴力が回復するにつれ、御殿医たちの声は頭に酷く反響するようになった。軽く頭を振って立ち上がる。慌て立ち上がる彼らを放っておいて、ラルトは一人、少し離れた場所にある人だかりへと向かって歩いた。
「陛下」
体の節々が痛む。割れていく人を押しのけるようにして、ラルトは『それ』を見下ろした。
穴。
穴だ。それ以外言いようがない。拝殿の舞台を半円に切り取るようにして、大地が深く抉られている。その奥に見えるのは同じ土ではなく、切り取られ精製された石を積んで作られた壁と通路と、さらに遥か地下へと伸びている暗闇だった。
「これは……いったい……」
ラルトの隣で誰かが言葉を漏らした。
何も知らぬものがそれを見たら、いっそ異様ともいえる暗闇。いくつか重なり合うようにして通路が見え、それを刺し貫くようにして暗闇が伸びる。日が落ちてきたから余計であった。誰かが松明を掲げその穴をのぞき見るも、最奥を照らすことは叶わない。人が近づいた拍子に小石が落下するが、それが地面へ到達した音は、聞き取ることができなかった。
ラルトは重い上着を脱いで適当に丸めると、手近な武官に押し付けた。狼狽する武官を無視し、身軽になって目的の人間を探す。だが探しているそのどちらの姿も、ラルトには見つけることができなかったし、誰に尋ねても知らぬの一点張りであった。
一人は女だ。ティアレ。あの爆発の中心に居たと思われる。というよりも実際この祭壇にこれだけの穴を穿ったのも、ティアレだろう。
落下している可能性よりも、むしろあの男に囚われていたことのほうが気になった。ティアレの魔力の暴走は、たいてい彼女に危害を与えようとしているもののもとへ集中する。それはデュバートの件から判っていることだった。だが魔力の暴走が引き起こされても彼女には被害はほとんど及ばない。無意識のうちに制止がかかったのか、実際抉られている場所は彼女らが立っていた場所からは少し離れていた。にも関わらず、見回しても、周囲に尋ねても、彼女の姿は見出せない。
一番高い可能性は、あの、人あらざるものに身体を変化させた男が、ティアレをつれてこの穴の中に飛び込んだことだった。
もう一人の探し人は、幼馴染だった。嫌な予感がした。シンバ・セトの変化には、心当たりがある。メイゼンブルで禁止された肉体改造の呪法。体の中に種を埋め込んで、それを媒介として体全てを変化させるものだ。不老不死の研究の一環として行われたものだったと記憶している。かつて本で読んだことがあった。
そして、報告にあった、デュバートの古い屋敷で見つかった、真新しい魔術の跡。
「陛下」
ご無事でしたか、と駆け寄ってきた男には見覚えがあった。エイ、と名乗った男だ。息を切らし、汗を滲ませ、目の前に立ったその男に、ラルトは問うた。
「ジンをみたか?」
「え、あ、はい。……それなのですが、託を預かっております陛下」
エイは汚れてしまって申し訳ございません、と断り、一枚の紙切れを差し出してきた。綺麗に折りたたまれた小さな紙片。付いている皺を伸ばしながら広げていくと、滲んだ走り書きが目に入った。
くしゃ
ラルトはそれを一瞥するなり握りつぶし、穴の中へと投げ入れた。ラルトの突然の行動に仰天して目を丸めているエイに、後は頼むと言い残し、御殿医の傍までラルトは戻る。
「へ、陛下。一体どうなされたので……」
石畳の上に横たわっていた剣を拾い上げたラルトは、普段それが常に携えている剣であることを確かめた。その鞘を握り締め、踵を返す。
「陛下!?」
呼び止める声は聞こえない。
聞きたくない。何も。
ただ、無性に苦しかった。
「……こ、こは?」
ティアレは周囲を一瞥して呟いた。
古い、場所だった。
それだけが判った。懐かしいような感覚。既視感、とでも言おうか、それが体中の産毛を逆立たせ、胸の奥を引き絞るような切なさを与える。
先ほど舞の奉納を行った円形の舞台に似ていなくもない、石畳の、古い、開けた場所。
すでに群青色に変わりかけた空が上空にはあり、鬱蒼とした木々の葉が、その円形の空の周囲を飾っている。石畳らしきものが足元にまばらに並べられ、ほとんどが土と草に埋もれていた。円形の舞台だけが、草の上部をわずかに上回ってしっかりとした姿を見せている。その向こうには自分たちが今出てきたような出入り口が、洞穴のようにぽっかりと口を開いていて、すぐ傍にはつる草に絡まれた扉らしきものが壁に寄りかかっていた。
「ここは……?」
応えるものなど誰もいないのに、自分自身に問いかけるように繰り返す。
だが返ってきたものは沈黙ではない。
「古い刑場だよ。魔女が死んだ、曰く付きのね」
応えるものが、円形の上にゆらりと立って、微笑んでいた。
「こんばんは。ティーちゃん」
この国の宰相が、ここに居た。
(苦しい)
走って。走って。走って。
また、走る。
そうした一連の動作はシノの肺を引き絞り、筋肉に悲鳴を上げさせた。あぁ、自分はどうしてまたこんな風に、闇の中を走っているのだろう。
いつも、何か予感がしているのに。
いつも、取り返しが付かない。
息苦しさに眩暈を覚えながら、シノは既視感に囚われていた。
走って。走って。走って。
自分は目にしたのだ。
爪あとのような細い月に、照らされる部屋で。
ぐ、と自分を捕らえているそれが低く呻き、触手から解放された。腐りおちたような肉片とともに、草の上へと落下する。
「つ……っ」
したたかに腰を打ちつけ、その衝撃はもともと痛めつけられたティアレの体には堪えた。じくじく痛む身体を奮い立たせ、両の足で踏ん張って、面を上げてジンを見据える。
ジンは無表情だった。そうして、冷ややかにティアレを見下ろしていた。
「……ジン様……」
「まぁ、俺が何しようとしているのか判ってないわけじゃないよね。ティーちゃん、いっつも警戒してたもんねぇ俺のこと」
ひょい、と彼は右手に持っているものを掲げてみせる。鈍い光を照り返す、肉厚の、わずかに湾曲した刀身を持つ刀。青龍刀と、言ったか。たしかこの国特有の刀だ。
「私を、殺しに」
ティアレは不思議な感情に渋面になりつつ、男を見上げた。喉元まで込み上げる、胸の奥を、爪を立てて掻き毟られたような、苦く複雑な感情。
あぁ、とティアレは納得した。
この、耐え難い感情が、裏切られた、という感情なのだ。
ジンは頷いた。
「そういうこと」
「何故ですか?」
「さぁ、何故だろ」
ジンはそういって曖昧に笑い、そしてすぐにその笑みを消した。纏う空気は冷ややかで、鋭い。
昔、ラルトを、彫金が施され、よくよく研磨された剣のようだと思ったことがあった。ジンもまたそう思える。ただラルトが美しい銀の鋼で拵えられた剣であるのなら、ジンはさながら氷河から切り出した氷のように、鋭く、そして危うい。
触れずとも、冷気だけで、近づくものを傷つけるような。
少し間をおいて、彼は言った。
「俺が弱かったっていう、ただ、それだけの話」
こつ、と石畳を踏み鳴らして。ジンが歩み寄ってくる。軽く跳躍して、舞台を彼は下りる。すりつぶされた草の匂い。
かちり、と鳴らされる鍔と、振り上げられる鋼。風を切る音。
ジンの微笑が、遠い。
「ジン様………」
「やめなさい!」
身体を襲うはずの痛みは、悲鳴じみた女の声に取って代わられた。目の前のジンに横から何かが飛びかかっていく。不意を付かれたらしい彼は体勢を崩して真横に転倒した。ざ、という草がなぎ倒される音。
ティアレは呆然と立ち尽くしながら、ジンの身を押さえる女の名を呼んだ。
「……シノ?」
シノはジンとともに転倒したが、小さな呻きを上げて咳き込みはじめた。その彼女を無造作に、ジンは押しのけ立ち上がる。ティアレは腹部を押さえて背中を丸めるシノの傍に膝を突いて、その身体を起こした。
「大丈夫ですかシノ!?」
自分たちを見下ろすジンの瞳は冷ややかで、そのときティアレは初めて、何故自分がこれほどまで畏怖を感じ続けていたのか、理解した。
この、目だ。
初めて首元に冷たい手が触れたとき、垣間見た、この冷ややかな目。老人女子供、必要ならば全てを切り捨てることも厭わないような、決然とした何かをたたえる目。
ラルトが信じている。だからこそ自分も信じることにした。けれどもどうしても根底にある恐怖は拭いきれなかった。それがどうしてか、今、理解できた。
自分は、この目が、恐ろしかったのだ。
息を呑み、ジンの視線を真っ向から受け止めることしかできないでいるティアレの腕の中で、シノの体が大きく跳ねた。赤黒い塊が吐き出される。
血。
「シノ」
「……お止め下さい閣下」
シノはティアレの身体との間に手を差し入れ、身体を起こすと、苦悶の表情に顔を歪ませて叫んだ。
「こんなことをしても、誰も何も喜ばない。死者は貴方に何も強要しない……何もです!」
ジンが何気なく刀を持ち上げた。丁度その切っ先が、ティアレの首元を掠める。
ひやりとした感触。刃を向けられる経験など、一回や二回ではない為に慣れてはいる。
けれども今のときほど背筋が凍る思いをしたことなど、かつて無かった。
ジンの目線が、シノの方へと動く。
「来るかな、と思っていたけど、早かったね」
「おそらく、この国で誰よりも貴方を警戒していたのは私です」
ジンは納得したように頷いた。
「そうだった……でも」
その切っ先を、肩を上下させるシノへと移動させながら、ジンは薄く笑った。
「邪魔しないで」
「閣下……」
「俺はね」
ジンが見上げたその先に、細い月が上っている。弓というよりは、乙女の爪痕のような細い光。
完全に日は落ちたというのに、舞台全体が仄かに発光している。魔力が、溜まっているのだ。
「戻れないんだ。戻れない。引き返せない。まだ、繰り返し繰り返し、夢に見るんだよシノちゃん。馬鹿みたいだろう? 馬鹿だと思うんだけれど。その夢の中でヤーナが囁く。彼女を、殺してってね」
「閣下」
二人は何の話をしているのだろう? 首を傾げれば確実に切っ先が首を傷つけてしまうので、わずかに眉を寄せる程度にとどめる。レイヤーナの名前が何故出てくるのかも判らない。
シノが辛そうに繰り返す。
「閣下。死者は何も言いません。しっかりなさってください。馬鹿げたことをして、裏切りを上塗りするおつもりですか。そうして失うのは陛下です。陛下は閣下とティアレ様を失われる。私は問いましたでしょう? 陛下を、愛しているのですね、と。愛しているのなら、もう、やめてください。死者に囚われて、生きている大事な方を傷つけるのはおやめください」
「シノちゃん」
ジンは静かに首を横に振り、片膝を地についた。整った綺麗な顔が近づけられる。シノは怯えた様子は無かったが、それでも僅かに、たじろいだ。
視線だけが、ティアレのほうを向いている。
「でももう俺は戻れないんだ。俺は、確かに、裏切ってしまったのだから」
ご、という音が響き、ティアレは手刀がシノの首元に落とされたことを知った。彼女の体から力が抜けて、ティアレの身体に体重がかかる。
「シノ!……っ!?」
ぎゅ、と髪を掴まれる。怖いぐらいに綺麗な顔が、間近にあった。
「………どうして、だろうね」
ジンの薄い唇が、独白のように言葉を吐いて。
走った鋭い痛みと鈍い衝撃に、ティアレは意識を手放した。
その地下道は、遊び場の一つだった。
宮城の裏手に入り口がある。すぐ傍の丘には白い墓石が夕闇に浮かび上がっていて、白い花が添えられていた。誰かここに人が来た証拠だ。この墓のありかは自分を含めて三人しか知りえず、その誰が花を添えたかなど愚問だった。
草木に隠された、土に半分埋もれた入り口に足を踏み入れる。暗い地下道には魔力をためて発光する、特殊なコケが生えている。足元は悪いが、用心していれば躓くほどではない。その幻想的な雰囲気を好んで、無邪気な自分たちの幼馴染は、ここを遊び場に指定することが多かった。
階段を半ば転げ落ちるようにして駆け下りる。天井から結露した水がぽたりと零れてくる。溜まった水溜りを踏み抜けば、跳ねた泥水が衣服を汚した。
最下層にたどり着くと、ラルトは道を選んで駆け抜けた。心臓が引き絞られるように痛い。疲労が溜まりやすいのは、ここ数日ろくろく睡眠をとっていなかったからだと納得する。今布団の上に倒れこんだら、確実に丸一日起き上がれない自信があった。
光が見えた。
通路の終焉。この丘、時に宮城の地下にまで及ぶ網目状の通路の中心。その広場に足を踏み入れて、匂い立った草いきれに息を吐く。
一度足を止めて、ラルトは面を上げた。
広場の中心に、男が一人、立っている。
緑に囲まれた石造りの舞台の上に、男が一人佇んでいる。
場違いのように屈託なく笑う男の名前を、ラルトは呟いた。
「……ジン」