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94 文通

某月某日
「卒業はいつなんですか? 迎えに行きます」

某月某日
「くるな」

某月某日
「あなた他の方々には何枚も何枚も書いていて、私にはたった三文字ってひどくないですか!? 迎えに行きます。……と、言いたいところなのですが上司がヒノトが帰ってきたらまとめて休みやるからそれまで働けって鬼のような量の仕事を下さったので学院へはいけないようです。残念ですが、気を付けて帰ってきてください」

某月某日
「妾が来るなと書いたのは、その休みを休息に充てて欲しかったからじゃ馬車馬のようにこきつかってもらえとは書いとらん」

某月某日
「あなたがいないと休みになりません」

某月某日
「待てというに」

某月某日
「ちゃんと帰ってきますよね」

某月某日
「帰るよ」

某月某日
「まぁ、逃げたら追いかけて縛り付けますが。どこにも出しません」

某月某日
「帰るというておろう。荷造りも終えたよ。この手紙と一緒に送ったものは妾の部屋に放り込んでおいてくれ」

某月某日
「貴女の部屋を片付けました。もうすぐですね」

某月某日
「今から帰る。会いたいな」


「私も会いたいですよ」
 届いた最後の手紙を呼んで彼は呟いた。
「お待ちしております」

 春は、もうすぐそこだ。