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番外 功罪の等分 2


 招待客人数の件を夫が解決してくれることになったので、次は衣装である。
 貴族にも通用する衣装は製作に時間がかかる。下手をすると年単位だ。とりわけ花嫁衣装ともなれば、凝った織り方の布を用いることも珍しくないからして。
 幸いにマリアージュの婚礼のため、生地を集めて間もなかったから、その点は問題ないという。しかし、布が仕上がっていても、衣装を縫うにはかなりの時間がいる。女王の次の婚礼の準備のことも考えると、ディアナ・セトラの結婚式は二、三ヶ月以内に行うことが望ましく、それまでに仕立てるとなれば、ずいぶんと急ぎの仕事になる。
 だから、衣装のかたちを早々と決めるべく、ダイの仕事ついでに、夫婦そろって衣装部に顔を出したのだが。
「だめです」
 ここで問題が発生した。
「ひと通り拝見し、どれも素晴らしいものとはお見受けしますが、妻には着せられません」
「全部ですか?」
「全部です」
「なぜ」
「露出が多いので」
 真顔で言い切るヒースに衣装部の女官たちが揃って呆れた声を上げた。
『はぁ?』
「妻が減ります」
『減りませんよ!?』
 女官たちがぎゃいぎゃい抗議する。一方のヒースは涼しい顔で、そこそこ気に入ったらしい図案を広げて、淡々とここがあぁでこうしたら、などと修正案を述べている。
 部屋を衝立で仕切っていた女官が、躊躇いがちにダイへ尋ねる。
「あの、よろしいのですか……? 衣装をリヴォート様にお任せして……」
「はい。わたしは特に好みがないので」
 ヒースから見て、好ましく思ってもらえる形がよい。
 ダイは淹れてもらった茶を啜りながら答えた。
 婚礼衣装を着てみようかな、と、思った理由も、彼が楽しめるなら、というものであることだし、美的感覚も信頼している。
 ただ、予想が少し外れたのは――衝立ごしに聞こえてくる女官たちとヒースの会話を聞く限り、彼女たちと彼に合意する気配がまったくない、ということである。
「御式の予定は暖かい季節ですよ! 見せられるところを見せなくてどうするんですか!」
「別に見せなくても彼女の美しさが損なわれたりしませんので?」
「わたしがどれだけ長い間、ダイ様に似合うだろうご衣装を妄想し続けてきたかおわかりですか!」
「わかりたくありません。人の妻を妄想の対象にするのをやめていただけますか」
「ダイ様の、女装! 滅多にない機会なのに! どうしてぽっと出の男に邪魔をされなくてはならないの!?」
「ぽっと出の男じゃなくて、セトラ様の旦那様です。主任」
「あと主任、それはそれとしてリヴォート様の衣装をつくるのは楽しみにしていらっしゃるじゃないですか」
「リヴォート様、お顔がよろしいですもんねぇ」
「美男美女の夫婦は飾り立てがいがあります」
「そこ、黙らっしゃい!」
 ダイと椅子に向かい合って座る女官――衣装部の副主任が項垂れながら謝罪した。
「うちの主任たちが……なんかその……うるさくて、誠に申し訳ございません……」
「あぁ、いえ……。何だか夫もこだわりがあるみたいで、すみません。ハイ」
「とりあえず、陛下の件についてのお話だけ終わらせても……」
「そうですね……。お願いいたします」
 そもそもダイは衣装部にマリアージュの衣替えについて打ち合わせるため、足を運んだのだ。自身の婚礼衣装の件は、そのついでである。
 女王と儀典部も出席する合同の会議はまた別途にあるものの、回数が限られる。初回と最終確認以外の擦り合わせは個別で行うのだが、立場的にどことも顔の繋がっているダイが、連絡役を担うことが多かった。
「ですので、こちらは――で、こうした方が!」
「では、――を――して――でもよいのではありませんか?」
「ううう……いえっ、でも!」
 衝立越しに漏れ聞こえる女官たちとヒースの会話は終わる気配を一向に見せない。やや、夫の方が押しがちだろうか。
(いまからでも、口を出すべきです?)
 副主任と仕事を進めつつ、ダイは胸中で自問した。
 昨晩、衣装は自分に任せてもらっていいか、と、訪ねてきたヒースへ、もちろん、と、気軽に答えたのが悪かったのか。
「……では、衣替えの件はこちらで」
「はい。じゃあ残りは明後日の会議で……」
「でもでも、ダイのここの美しい線は見せるべきだと思うのです! 絶対!」
「美しいことには同意しますが、それを他人に見せる必要はまったくありません」
「……まだ続けているんですか……?」
 こちらの仕事が終わったにも関わらず、討論をつづけているらしいヒースたちに、ダイはちょっと呆れた。同じ意見らしい副主任が嘆息しながら、ぱたぱたと衝立を畳み片付けていく。
 やがて誰もがぬるい目で見守り始めた、ダイの夫、対、衣装部主任の対決に終止符を打ったのは、どこからともなく顔を出した、新しい来訪者だった。
「いっそのこと、露出と隠しちゃう方の、間を取ったらいいんじゃないかしら? おふたりさん」
「アルヴィー?」
「はぁい、ダイ。今日もお仕事お疲れさま」
 ヒースたちの真ん中に佇むアルヴィナが、挨拶にひらひらと手を振り、図案の散らばる卓の上に、ごん、と、籐の籠を置いた。
「調整が終わった道具を持って来たんだけど、お話の終わる気配がちーっとも見えないんだもの。割り込んじゃってごめんなさいね。お道具係の方はどなたかしら?」
「あ、わたしです」
 壁際で作業に戻っていた女官が手を挙げる。彼女の下へ歩こうとしたアルヴィナを、ヒースが慌てた様子で引き留めた。
「ちょっと待ってください。間を取るというのは?」
「んん? あぁ、ヒースはダイの肌の露出を控えさせたくて、主任さんは逆に首回りとか腕とかを出したいんでしょ? なら、布を透かし織りにすれば? えーっと、首回りから、袖口までとか?」
 長く討論していたふたりは、なるほど、みたいな顔になった。
「ダイ様はそれでよろしいかしら?」
「ヒースがいいなら、かまいませんけど」
「……妥協しましょう」
 夫が神妙な顔で了承したので、ダイの婚礼衣装はすったもんだの末、透かし織りをこれでもかと使う、予算も手間も想定の倍を超えるものになった。
 その予算をどうやって夫が宰相に呑ませたのか、ダイは知らない。


 年が明け、女王マリアージュの《国章持ち》の華燭の典の報せが、招待客へと送られた。開催は花季の初めだ。客数は当初の予定よりもかなり絞られ、会場には王城の本宮奥にある古い拝殿と、それを取り囲む中庭が指定された。デルリゲイリア王城でも古い一角で、アルヴィナ曰く、魔の公国から追いやられた旧宗家――ナヴル家の一派が逃れてきた初期に建てられた部分だという。
彼女がなぜそのようなことを知っているのかまでは、ダイは尋ねていない。十中八九、人々が逃れてきたところを傍観していたとか、メイゼンブルから匿ったとか、魔術の敷設に手を貸したことがあるとか、そんなところだろう。


 連なる建物の窓枠に色とりどりの花が飾られている。広い通りを行きかう馬車は家門入り。貴族か、大商人か。入城はこれで二回目になるが、ダイはよくこのような場所で働いているものだと、アスマは改めて感心する。
 馬車の窓に流れる景色を眺めていると、アスマ、と、笑いを含んだ声が掛かった。対面に座るアルマティンからだ。
「どうしたの? ぼんやりしちゃって」
「……こんな、国の中心で、あの子が結婚式ねぇ、と思って」
「たしかに。感慨深いものがあるよねぇ。リヴがあの子を産んだとき、わたしの膝の上でもちゃもちゃしてたのに」
「しかも娼館の産室でね」
 アスマの片割れだったリヴが、ダイの母親があの娘を生んだ日は昨日のことのように思い出せる。リヴはすでに娼婦ではなかったけれど、アスマがときどき仕事をしていた娼館の産婆に取り上げてもらったのだ。そこにはまだ見習いだったアルマティンもいて、湯を沸かしたり、布を集めたりという雑用に駆り出されていた。
 夜の街の朝方。淫靡な残り香を気だるげに纏った、仕事明けの女たちが、散らかった狭苦しい産室に顔を突っ込んで、生まれてくる赤子が男なのか、女なのか――リヴに、似たうつくしい子どもなのかを、祈るように見守っていた。
 くしゃくしゃなのに、人目を引いてやまない、美しい女の子だと、あきらかな赤子だった。
『アスマ』
 その子が。
『わたし、結婚するんです――彼と』
「大したものよねぇ。王城の中心で、女王さまたちに見守られながら、貴族もうらやむ結婚式を挙げるんだから。あのリヴォート様とね」
「そうだねぇ……」
 花街に残りたいのだと訴えていた十五の娘を、貴族の遣いを名乗るあの男に預けたのはもう何年前になるだろう。あのとき、彼女を嫁にやるような気分で見送ったのは確かだが、あの男と結婚すると初めて聞いたときには驚きでものが言えなかったし、ひっそりとした婚姻が、方々から客を呼ぶ盛大な式を挙げることになったというのだから、未来はどう転ぶかわからないものだ。
 馬車はアスマたちを王城の奥へ奥へと運んだ。アスマは結婚の報告を兼ねた会食をするため、ダイから王城に招かれたことがあったが、そのときよりもうんと奥まったところで、今回はアルマティンと共に下ろされた。貴族でも特別な許可なく立ち入ることのできない、本宮の古い一角が今日の会場ということで、ダイの立場の高さをまざまざと感じさせられる。
 ダイを花街から連れ出した男は、あの子の誉れを聞く日を楽しみにしていて欲しいと、かつてアスマに述べた。想像と違うかたちで、彼の言った通りになった。
「アスマ、エルンスト夫人」
 招待客が集まる庭園に案内されていると、今日の主役の片割れに呼び止められた。
 ヒース・リヴォートだ。
 明るい色目の正装に、金蜜色の髪を整えて、背筋をすっと伸ばして佇む姿は、びかびか輝いていて目が痛い。傍らのアルマティンが胸を押さえて、うっと呻いている。気持ちはわかる。
 彼は洗練された所作でアスマたちに一礼した。
「本日はご足労くださり、ありがとうございます」
「こちらこそ。お招きありがとう。よいのかい。こんなところで油を売っていて」
「あなたをお誘いに参りました、アスマ。これから妻のところへ向かうので、ご一緒にいかがかと」
「……あの子のところへ?」
「会場ではお話しする時間を、差し上げられないでしょうから」
 アスマはダイの後見人だが、親族ではない。ダイは花街の出自を伏せているので、アルマティンの夫の縁故で招かれていることになっているのだ。人目のある本会場では親しい会話を望めないと、ヒースは気を利かせてくれたらしい。
「行ってきなよ、アスマ。あたしは旦那のところに行っているね。ミゲルたちも着いているだろうし、絶対がちがちのあの子らの緊張をほぐしてあげてくるわ」
 アルマティンの夫は先に登城している。彼女はアスマを迎えるため、別行動をしてくれていたのである。
 アルマティンに背を押され、アスマはヒースに並んだ。どうぞ、と、彼から述べられた手を取る。日ごろ、紳士に先導されるようなことはないから、面はゆいというか、何というか。
「妙な気分です」
 と、アスマの胸中を見透かしたようにヒースが呟いた。
「あなたとこのようなかたちで歩くことがあるとは思ってもみませんでした」
「わたしもだよ」
アスマは笑って同意した。
「式はしないって話じゃなかったのかい?」
「の、はずだったのですが。まぁ、させてくれるというので、ありがたく。彼女がわたしのものだと、いまだにわからない方々が多いそうなので、見せつけてほしいと、マリアージュ様からの要請です」
「はぁ。わたしのもの、ね。……噂は色々と聞いているよ。ずいぶんとあの子に耽溺して腑抜けになったんじゃないかってね」
「あなたの耳にそういう風に入っているなら上々ですね」
「……本当は違うのかい?」
「おおよそ合っていますよ。そういった噂を広めてくださる方々に、わたしが感謝しているというだけで」
 飄々と告白する男にアスマは呆れた。愛妻家ぶっているのは、わざとか。
「……あの子を不幸にしないでおくれよ」
「最大限、力を尽くします。が、必ず幸せにするとは、約束はできません」
「それはあんたがあの子を利用しているからかい?」
「いいえ。わたしが背負う咎ゆえに」
「……なんだって?」
 首を捻るアスマにヒースが淡く笑って答える。
「わたしには一生、背負い続けるべき咎がある。彼女は笑ってそれを受け入れるけれど、それが彼女を傷つけることもあるはずです。だから、あなたに必ず、と、彼女の幸福を約束はできません。ただ――ひとつ言えることは」
 言葉を切った彼はまっすぐアスマを見て告げた。
「彼女が不幸なら、わたしはそれ以上に不幸でしょう。えぇ、力を尽くします。彼女が幸いに笑っていられるように。命を懸けて」
 ヒースはとある扉の前で立ち止まった。番兵が守りを固める、ちいさな装飾扉には野ばらが飾られている。花嫁の控え室だった。
 その扉を叩こうとする男の手をアスマは差し止めた。瞠目して瞬く彼にアスマは早口で告げる。
「命を懸けるのはやめな。ふたりで生きて幸せになるんだよ」
 自分たちにはそれができなかった。
 この人生を不幸だと、アスマは思わないけれど、叶うなら愛したふたり――あの娘の両親と、共に笑って生きていたかった。
「苦しみは共に背負い、幸せは人数分。そういうのを目指して楽しく生きてくれれば、それでいい」
 アスマはヒースから手を離した。
 ヒースが苦笑し、扉を叩く。
 はぁい、と、女の声が扉越しに響いた。


「ダイ、リヴォート様がお越しよ。あと、もうひとりお客さま」
 衣装の着付けが終わって、椅子から動けないダイに代わって、廊下を見に行ったティティアンナが、夫の連れる女に胡乱な視線を向けつつ来客を告げた。
 豊かな黒髪は染めているのか。それとも鬘か。きれいな赤毛になっている。貴婦人然とした、露出と装飾控えめの礼装を纏い、細い銀縁が瀟洒な眼鏡を掛けていた。
 彼女が誰なのかダイには当然わかる。アスマだ。
 歓びに立ち上がろうとしたダイをアスマが慌ててたしなめた。
「こらこら。急に立つのはおよし。躓いたらことだよ」
「あ、すみません。そうですね……」
 アスマの指摘も無理はない。今日の衣装、裳裾が長く、動きづらいことこの上ないと、ひと目でわかる。マリアージュに「わたしの衣装の方が動きやすそうだったわね」と言わしめるほどだ。
 ヒースが傍らに立って手を差し伸べる。その手を借りつつ、裾をひっかけないように用心しながら、ダイは椅子からゆっくり立ち上がった。
 今日の衣装は衣装部が総出で奮起して仕立てた、芸術品のような衣装である。胸元から足下までを覆う最上級の白絹が、身体の線に沿って絨毯に落ち、足を中心として花のように広がっている。腰まで露出した背中を覆うのは二重に重なった透かし織りである。肌当たりを考えて、糸から紡ぎなおしたものを使ったというから恐れ入る。その透かし織りは、手首から顎下まで肌という肌を覆っている。模様は野ばらを初めとし、祝福に用いられるあらゆる花が織り込まれるという凝りようだ。
 仕上がった衣装を初めて目にしたとき、ダイは正直のところ少し引いた。
『あの……これ、マリアージュ様のより豪奢じゃないですか?』
『予算はわたしのより低いから大丈夫らしいわよ』
『本当に? 本当にそうなんですか?』
『……少なくとも、格式ではわたしのより落ちるらしいから。ダイジョウブ』
『ぜんぜん大丈夫に聞こえないんですが……』
『ヒースと衣装部に衣装を丸投げした自分を恨みなさいよ……』
『丸投げじゃないです。白熱しすぎているところに顔を突っ込むのが怖かったんです』
『同じじゃない』
 と、同じく呆れた顔の主君と言い合ったものである。
 立ち上がったダイを凝視していたアスマが、感嘆の息を吐いて呻いた。
「こりゃあ、見事なものだね……。まるで聖女のようだよ」
「あははは……」
「ティティアンナ。水差しを補充してもらっていいですか」
「あら、本当。空になっておりましたね。失礼いたしました。……ティーナ、おいで。水を汲みにいくよ」
 ヒースから依頼を受けて、ティティアンナが懸命にダイの裾を直していた娘を呼びつける。
 退室する彼女たちを見送り、ヒースはダイを腰掛けさせた。
「アスマもどうぞ、そちらの椅子へ。……ディアナ、わたしも控え室に戻ります。外のブレンダに入室するよう言いますから、何かあれば彼女に」
「わかりました。ヒース、アスマを連れてきてありがとうございます」
 ヒースはダイの頭に口づけて微笑んだ。
「きれいですよ。またあとで」
 そう言い残して彼は一礼し、部屋を出て行く。
 アスマが呆れた顔でヒースを見送る。
「人の前でぬけぬけと」
「大事にしてもらっています」
「ならいいけどね。……改めて思うけど、あれは扱いの難しい男だよ」
「知っていますよ。大丈夫です。それも含めて好きになってしまったから、仕方ないですよね」
 対面の椅子に座ったアスマが瞬く。ダイは苦笑した。
「こういうところ、お母さんに似たのかなぁって思います。昔は顔以外、あんまり似ているって、思ったことなかったんですけど」
「エムルに似たのかもしれないよ」
 と、アスマがやさしい声で言った。薄々感じていたが、アスマが父のことを話すとき、声が少しやさしい。
「あれも愛情深い男ではあったんだ。ちょっと、絵に傾倒しすぎていただけでね」
「ただわたしに愛情のかたちを教えてくれたのは、アスマですけれどね」
 花街から自分を出すために、敢えてダイを養子にしなかったアスマ。
 けれども、未来を見据えて、彼女に出来得るかぎりの教育をダイに施し、ずっと見守り続けてくれていた。
「ヒースと結婚することを話したとき、こちらのことを説明することに精一杯で、ちゃんと伝えていなかったことがあったなって」
 彼と結婚することが正式に決まったとき、アスマを王城に招いて会食した。結婚に至るまでの公の理由に加え、ミズウィーリでの日々や、ペルフィリアで過ごしたときのことを、場所や事情を伏せて話すだけで時間が終わってしまったのだ。次に会ったときにと思いながら、マリアージュの婚礼式典のこともあり慌ただしく、今日まできてしまった。
 ダイは少し緊張しながら居住まいを正し、アスマへ両手を伸ばした。
「アスマ――お義母さん」
 ダイが腕を回した女の身体が少し強張る。
「あの日まで」
 花街にヒースが現れた、あの日まで。
「わたしを大事に育ててくれて、ありがとう」
 アスマがダイの身体を抱き返す。
 ティティアンナたちが現れるまで、自分たちはずっと、そうしていた。


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