好み(金環蝕)


「あなたの趣味がわからないわ」
「俺の趣味?」
「そう。奥さまとあの子、違うのではなくて?」
「ん? ファイナと誰?」
「察しなさいな。かんざし買ってあげるぐらいにはあなたが気に入っているあの子よ」
「……あぁ。で、なんの趣味?」
「お付き合いする趣味」
「……別に彼女は俺の愛人じゃないんだけど」
「でも気に入ってはいるのでしょ?」
「あー? そりゃまぁそうだけど。でもなー」
「気に入っているんだったら囲ってしまえばいいのよ。他の男に盗られてみなさい。絶対に悔しいに決まっているわ」
「他の男」
「お気に入りがいつまでも自分の手の中にあるとは思わないことね。あなたは無駄に長生きだけど、タダヒトはそうではないのよ? 忘れたの?」
「厳しいなぁ、氷の女王さまは」
「わたくしもあなたほどではないけれど、無駄に生きておりますもの」
「あ、誰かにフラれたのかっい、いて! いて! いたいってあー!!」