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第七章 衝突する探究者 2


「……手足の手入れ?」
「そうです」
 鸚鵡返しに訊くサイアリーズにダイは首肯した。
「そんなにたいそうなものじゃないです。精油を付けて揉み解すだけ……。普段、そこまではされていませんよね?」
 王母の肌は垢じみてこそいないが、乾燥しきっていた。身体を清める以上のことが行われていたとは思えない。
「それがアタラクシア様の御心を呼び戻す手立てになる。あなたはそう言うんだね、ダイ」
「呼び戻すかもしれない、です。間違えないでください、サイア」
 ダイが訂正を入れると、サイアリーズは、失礼した、と、諸手を上げた。
 小スカナジア宮へ出向いていたマリアージュたちは、午後になってデルリゲイリアの館に戻った。情報収集と人脈作りの首尾は上々のようだ。サイアリーズにはかなり顔を繋いでもらったらしい。
 その謝礼に、マリアージュはゼムナム宰相を茶に招いた――とはあくまで建前。
 アタラクシアの様子を聞くべく、サイアリーズは立ち寄っていた。
 盗聴防止に《消音》の招力石を配した客室には、ダイとマリアージュ、アルヴィナ、他、事情を知るデルリゲイリア側の護衛や文官、そしてサイアリーズとイスウィルが揃っている。
 そこでダイは皆に午前の報告と、すこしばかりの提案を述べた。
 ひとつ、王母の肌の手入れを積極的に行うこと。
 日中は夜着から着替えさせて、化粧も施すこと。
「友人に医者が言っていました。アタラクシア様のような状態のとき、身体に刺激を与えることが有効である、と。問題は色々ありますけれど」
「問題? たとえば?」
「さっき言った通りです。確実に回復する方法ではありません」
 サイアリーズにダイは答えた。
 アタラクシアのような症状は、花街の芸妓たちの間でも稀に見られた。不特定多数の男女に春をひさいぐことへの忌避感からや、客に手ひどく扱われたことで、まぼろばの地に心を旅立たせるものがいたのだ。
 彼女たちを丁寧に扱うよう、指導した医者はロウエンだ。
 清潔な衣服にきちんと着替えさせ、折を見て話しかける。食事は流動食ばかりになりがちだが、味付けや具材で変化を出す。身体の手入れは怠らない。
 生きることは心地よいと身体に認識させ、心を引き戻させるのだと、ロウエンは言った。
 確かに正気に返った者はいた。
 しかし先に身体が弱りきってしまい、まぼろばの地へ呼ばれた者の例もある。
「つまり、単なる気休めか」
「そうでもないと思うわよぉ?」
 サイアリーズの念押しに、アルヴィナが口を挟んだ。
 壁際に控えていた彼女は、一息に集まった皆の視線に狼狽することもなく、微笑みを浮かべて解説した。
「ひと同士の肌の接触は、互いの内在魔力の交換に繋がるわ。それが心地よいものであれば、精神への刺激になることは事実よ。寝かせておくだけより、回復には効果的」
「……それは知らなかった」
「メイゼンブルの崩壊は学術的にも大きな損失だったのね。ざぁんねん」
 サイアリーズの胡乱な視線を、アルヴィナが明るく受け流す。
 彼女の知見ははたしてどこから得たものなのか。デルリゲイリアの一同は怖くて訊けない。
 サイアリーズも追求はしなかった。
「……ダイの提案が有効であるとして……ほかにも問題がある言い方だったね?」
 ダイはサイアリーズに首肯した。
「まず、アクセリナ女王陛下のことです。もしもサイアが私の考えを試してみたとして、陛下に過度な期待を持たれるのは困ります。回復しない可能性のほうが高いわけですから」
「なるほど? 試すなら陛下をよく言い含めておかなければならない、ということか」
「それからもうひとつ」
 ダイは一拍を置いてゼムナムの宰相に尋ねた。
「……サイアは……カレスティア宰相は、アタラクシア様の回復を望みますか?」
 サイアリーズの顔から笑みが消える。
 ダイは彼女を静かに見つめ返した。
 ゼムナムの内情に踏み込んだ質問だ。本来であれば問うべきではない。
 ただ、知りたかった。
 サイアリーズの反応を。
 目覚めたアタラクシアがアクセリナに必ずしも望ましい反応を示すわけではない。ことの次第を鑑みれば余計に。
 母が子を慈しむとは限らない。けれどもサイアリーズはアクセリナに母を大切にしろと説く。
 だからこそ幼い女王は花を携えて母を訪い、彼女の目が正気に戻る日を待ちわびている。
 政治的に見ればアタラクシアには現状のままでいて欲しいはずだ。
 宰相の行動に意見を述べないという点においても。
 アクセリナに対する人質としても――……。
(アタラクシア様は“たいせつにしなければならない”母親だから)
 嫌なことにまで頭が回るようになったものだ。ダイは自嘲に笑いだしたくなった。
 サイアリーズがふっと笑ってマリアージュを見る。
「これの質問はあなたの差し金ですか? マリアージュ女王陛下」
「わたくしは何もしていない」
 上座に腰掛けるダイの主君は足を組みかえながら告げる。
「信じる信じないは、勝手ですけれども」
「わかりました。……では、答えよう、ダイ」
 サイアリーズがダイに向き直って力強く笑う。
「私はアタラクシア様を取り戻して以来、その御心よ地に戻られんと、知るかぎりの手を尽くした。魔術師にも診せたし、南大陸の薬湯を取り寄せもしたよ。陛下がお母上と毎日会えるように計らっているのも、医師に勧められたからだ……。ダイの提案と似たところがあるね。娘御たる陛下が毎日呼びかければ、アタラクシア様が正気となられる日も近づく、とね」
「本当に?」
「主神に誓って。商工協会に誓ったほうがいいかな?」
「アタラクシア様にとって、いまのままのほうが幸せかもしれなくても?」
 正気に戻ればアタラクシアは苦しい過去を直視せねばならない。
「……彼女はね、ダイ」
 サイアリーズが呻く。
 低められ、鋭さを増した声色。彼女はやや怒ったのかもしれなかった。
「私にとって姉も同然のひとだった。彼女を生かしているのは私の独善だし、彼女に正気に返ってほしいと願って手を尽くすこともまたそうだ。……それ以上を追求する権利は、他人であるあなたにはない」
「はい。すみませんでした。出過ぎたことでした」
 ダイが即座に謝罪すると、サイアリーズは表情を和らげた。
「提案は採用させてもらうよ。……衣服や食事の件はともかく、肌の手入れと化粧は、ダイがしてくれるのかな?」
「いたしません」
 ダイの返答にサイアリーズが目を瞬かせる。
 ダイはマリアージュに視線を送った。説明を投げられた主君は気だるげに息を吐いた。
「わたくしの化粧師に仕事をさせてやってほしいとのわがままを聞き入れてくださり、感謝していますわ。けれどもそれも一日だけのこと。今後、新たにとおっしゃるのなら」
「見返りを御所望ですか」
「《国章持ち》の仕事ですもの。あなたがわが国で働くなら、それなりの見返りをお求めになりますでしょう?」
 マリアージュの問いかけに、ゼムナムの宰相は苦笑した。
「おっしゃるとおり」
「とはいいましても提案したのはこっちですし、私の仕方でよければ手入れの方法ぐらいならお教えしますよ。アクセリナ女王陛下や世話役の方に」
 ダイの申し出にサイアリーズは破顔したが、マリアージュの眉間にはしわが刻まれた。勝手なことを言うなとあとで叱られそうだ。
「ちょっと待ってくれ……いま陛下の御名を出さなかったか?」
「アクセリナ女王陛下? 出しました」
「陛下にさせるのか?」
「そのほうがいいんじゃないですか? お母様を大切にしたいっていう、ご自身の意思にも適いますし」
 サイアリーズが複雑そうな顔で押し黙る。
 マリアージュが生温い目をダイに向けて言った。
「カレスティア宰相。ダイはこういう子よ」
「……マリアージュ様、ソレ、どういう意味です?」
「……気にしなくていいよ、ダイ。ところでダイはどうしてそんな提案を?」
 アタラクシアの件は放置しておくが無難。それがわからないほどでもないはず。
 サイアリーズが訝しげな目でダイを見る。
 ダイはそうですね、と、思案した。
 きっかけはアクセリナだ。呼びかけに応えを返すことのない母を慕う女王に、幼いころの自分を重ねたのかもしれなかった。
 提案した理由は、思いついたから、としかいえない。
 もっと強いて言うなれば。
「まあこれでうまくいけば、あなたにひとつ貸しを作れるかと思いまして」
 アタラクシアが回復したあかつきに、その始まりはデルリゲイリアの化粧師にあったと言わせられれば。
 サイアリーズは大きく目を丸め、一拍のちに弾けるように笑った。


 かくしてその翌日の午後より連日、ダイはアクセリナに会うこととなった。
「……ということですので、肌の手入れの方法を、陛下にお伝えいたしますね」
「うむ! たのんだ!」
 アクセリナが目を輝かせてダイに頷いた。
 王母はすでに長椅子へ移動させている。今日のアタラクシアは、夜着ではなく日常着姿。鮮やかな水色の布地に、花の刺繍が黄や白の糸で施されている。その明るい色目に、王母の髪や肌色がよく映えた。身丈からして彼女用に設えたものだろう。昨日の今日だというのに、サイアリーズは仕事が早い。
「どうすればいい? 朕にもできるか? 母上はよろこぶ?」
「陛下にはお母上の手を手入れしていただきましょう」
 サイアリーズにも述べたが、肌の手入れ自体は簡単だ。精油を塗布して揉み解すだけである。
 ただ、効果的な方向や力加減があるし、力を加える場所には要所がある。それらをアクセリナと王母の世話役に伝えていく。
「きっとアタラクシア様も気持ちよくなられますよ」
「そうか! がんばらねばな!」
 決意を表すアクセリナは、微笑ましかった。


「実際のところ、よーじょ様の腕前はどんな感じなの?」
「腕前はわかりませんよ。手の大きさや握力のこともありますから。一生懸命って感じですかね」
 その彼女の想いが母親に届けばよいと、ダイは思う。
「っていうか、よーじょ様って……」
「アクセリナちゃんよ?」
「いえ、それはわかります……。公の場では控えてくださいよ」
 はぁい、と、アルヴィナが間延びした返事を寄越す。大丈夫かな、と、案じながら、ダイは歩を進めた。
 王母に化粧をした日から数えて六日目の午後。ダイは別邸に向かうべく林内の遊歩道を歩いていた。ユベールとユマといういつものふたりに加え、今日はアルヴィナも同行している。
 敷地の境界として張った銀糸の件で、どうも気になることがあるらしい。
 到着した別宅には、変わった様子は見られなかった。ダイは茶の支度をユマに任せて、残りのふたりと上階へ上がった。
 王母の部屋にはすでに、アクセリナの姿があった。
「ごきげんうるわしゅう、陛下」
「ダイ」
 アクセリナが王母の座す椅子の前から、頬を上気させて駆けてくる。彼女はダイの上着の裾を引くと、円卓に飾られた花を指し示した。
「今日も花をいっぱい詰んだ。どうだ、きれいだろう!」
「本当ですね。今日は野ばらですか?」
「うむ。おなじ花であっては、母上もあきるであろと、言われてな」
 アクセリナが王母の傍に立つ侍女を振り返った。ダイも見慣れたアクセリナの侍従だ。花の件は彼女の提案らしい。
 聖女の御徴であった花は、小スカナジアにおいて至る処で見られる。遊歩道の脇にも色とりどりの野ばらが咲き揺れていた。いい考えですね、と、ダイが声を掛ければ、侍女は淡く微笑んだ。
 その反応に違和感を覚える。
(いつもならひと言ぐらい言うのに……)
 いやな予感が閃いて、ダイは半歩後退する。
 その右肩をアルヴィナがやわく掴んだ。
 ダイの耳元に、彼女はささやく。
「あなたの反応は正解よ、ダイ。……アクセリナ女王! 動かないで!」
 王母の方へ踵を返していたアクセリナが、アルヴィナに鋭く呼ばわれ立ちすくんだ。
 その足の脇を、光が奔った。
 それは侍女の足許で弾け、茨のように伸びあがり、にわかに彼女を拘束する。
「な、なにをする!?」
 アクセリナがアルヴィナを糾弾する。
 駆け出しかける女王を、ダイは急ぎ引きとめた。
「ダイ!」
「よく見てください。……あれは……あなたのよく知るひとじゃない」
 侍女が、ひび割れる。
 その破片が、少しずつ剥がれて落下する。
 同じ光景を、ダイは一度、ペルフィリアで目にしたことがある。
 卵殻めいた虚像がすべて剥がれ落ちると、女王の侍女を装っていた知らぬ顔の女が、膝を突いて忌々しげにアルヴィナを睨み据えていた。
 アルヴィナがダイの横に並んで微笑む。
「強制的に上塗りを剥がしたの。しんどいでしょう」
「……そんな……ばかな。そんなこと……」
 愕然とした声。彼女の心情はわからなくもない。
 《上塗り》の術を扱える魔術師は上級者だ。そして他人の上塗りを強制的に解除する術は、もっと稀有に違いない。
 ダイは護衛の騎士に声を掛けた。
「ユベール、ユマを呼んできてもらえますか?」
「わかりました」
 臨戦態勢をとっていたユベールが、剣から手を離して素早く退室する。
 ダイは彼の背を見送って、アクセリナから手を離さぬまま、侵入者の女に向き直った。
「それで、あなたはどちらの方でしょう。ここがデルリゲイリアの領域になるとはご存知で?」
 ダイの詰問に女は答えない。
 ダイを睨み返してくるばかりの女に代わって、アクセリナが答えを出した。
「……ヘラルドの家で会ったことがある」
「アバスカル卿の?」
「……こちらにきていたとは、知らなかった」
 ディンはどこへ行ったのだ、と、アクセリナは下唇を噛んだ。
 ダイもこの数日で、アクセリナの侍女と会話している。たまに同席していたアルヴィナも、何の反応も示してこなかった。入れ替わりは昨日今日のことだろう。
(無事ならいいですけれど……)
 ダイは深く息を吐いた。まずはこの女を本邸に連れ帰り、皆の判断を仰がねばならない。
 階下から近づく足音に、ダイは扉を振り返った。
「ユベール、とりあえず彼女を……」
 ダイは言い止した。
 足音の主がユベールではなかったからだ。


 ファーリルの館からの帰りみち、マリアージュはゼムナム宰相を、自国の館での茶の席に招待した。
「またお招きいただけるのですね。光栄です」
「今日のお礼もしなくてはならないもの」
 ファーリルの女王は昨日に小スカナジア入りした。マリアージュが早い段階で挨拶に出向けた理由も、かの国と親交の深いサイアリーズがいてこそだ。
 サイアリーズはマリアージュを多くの者たちに引き合わせ続けた。どんな場所にも同席していた。
 サイアリーズこそがマリアージュの忠臣なのではと錯覚するほど。
 館に戻ると茶の準備はすでに整っていた。紅玉色の澄んだ茶と林檎の甘煮を練り込んだ焼き菓子。慣れた祖国の味。南部の国々の茶は薄い金や緑をしていることが多く、菓子類の香辛料も独特で、連続で食べるにはマリアージュの舌に辛い。逆にサイアリーズは健啖家で何でも美味らしい。
「はぁ、陛下のお国の味はよいですね。おいしい」
 嬉々として菓子を食すサイアリーズはくつろいで見える。
 マリアージュは思わず苦言した。
「あなた自身のお国にいらっしゃるようね、カレスティア宰相」
「礼を失しておりましたか? 申し訳ございません。デルリゲイリアの雰囲気が良すぎるのです」
「大国ならではの余裕?」
「言葉通りに受け取っていただきたいものですね」
「私が言いたいのは――……ここまで言われて、何故あなたが怒りださないのか、ということよ」
 訝るマリアージュにサイアリーズが小首をかしげる。
「友好的すぎて不安になられる? 対等な関係を望んでいるだけだというのに」
「とある男の言葉よ。国の関係に、ただのお友達はありえない」
「わたくしもその男の意見に賛成ですね。ただ、わたくしの行動は充当な見返りに基づくものですよ」
 そうだろうか。
 サイアリーズはデルリゲイリアに尽くしすぎだ。大陸会議に向けたペルフィリアへの共闘関係の件を差し引いたとしても。
 王母がマリアージュの手元にあるからか、とも考えた。
 実際は逆だ。サイアリーズはマリアージュに、この上ない友宜を示すべく、偶発的な出来事を利用して、王母を差し出したに過ぎない。
 大陸南西部の三国とは懇意で、市井にも多くの確固たる伝手を持ち、他大陸との窓口でもある大国。
 それが芸技の小国に擦り寄る気味悪さは、ペルフィリアの行動と通じるものがある。
「以前に説明した以上の理由があったとして。それを聞かれて、陛下はどうなさるおつもりですか?」
「それは」
 マリアージュは言い淀んだ。
 サイアリーズがちいさく笑う。
「糾弾なさる? 敵対する? ……不安をお隠しにならないのは、お近づきになれたしるしと見做して、ひとつ助言をいたしましょうか。陛下は、もう少し客観的に自国を見て、自国の価値を知り、自国の価値を高めるよう動くべきですよ。あらゆる状況を利用してね」
 サイアリーズの口調は穏やかだったが、その目は冷厳だった。
「弱点にしても、知らずにさらけ出すか、敢えて餌として差し出すかでは、今後が変わります。あなたのお国のお姿を、わたくしが教えて差し上げるのも差し出がましいし、なにより双方にとって面白くない。己を知りて、彼を知る。……ディスラの将軍だったかな。そう言ったのは」
「……助言に感謝いたしましょう」
 マリアージュは細く息を吐いた。
「本当に、おやさしいのね」
「わたくしは個人的にあなたとあなたの化粧師を高く買っているのです。別宅での件は本当にぞくぞくした……。理由はどうあれ、あなたに友誼を示すわたくしを、是非、利用し尽くしていただきたいな」
「その言葉、いまに後悔なさるわ」
 サイアリーズが笑みに口角を上げる。
 傲慢で不遜なそれ。この女も狸だわ。と、マリアージュは顔をしかめ、紅茶の残りを啜った。
 やわらかな味に、幾何か落ち着きを取り戻す。
 その瞬間だった。
「陛下! 失礼いたします。危急のお話が!」
 入室の許可を求められることなく、扉が開いて騎士が駆けこんでくる。
 護衛に立っていたアッセが、険しい表情を部下に向けた。
「なにがあった!?」
「いましがた、ユマ・ゼクソンから報告が……セトラ様たちが得体の知れぬ集団に包囲されていると」
 アタラクシアの下に通うダイにユマは同行していたはずだ。
 がちゃん、と、食器を卓に叩き置き、サイアリーズが勢いよく立ち上がる。
 手元の扇を強く握りしめ、マリアージュは騎士に命じた。
「報告を続けなさい」


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