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65 我らが姫君

 珠のような姫君だった。
 ふくふくとした頬は真珠めいた光を放ち、いまにもほたりとこぼれ落ちそう。桜貝に似た爪が揃う小さな指。だれにでも機嫌よくきゃっきゃと笑う。
 ひとつひとつの作りは母親似だが、全体的な顔立ちは明らかに父親ゆずりだ。
 水の帝国の第一皇女と顔を合わせたものは口を揃えて必ず言った。
「かーわーいーいー!!」
 やわらかなおくるみに包まれて、ゆらゆら揺れるゆりかごのなか、皇女の目は次々に現れる影に目を瞬かせていた。
 視界はまだはっきりしない。けれども七色に輝く虹の光が――人々を象る神の息吹が、万華鏡のようにくるくると、入れ替わり立ち代わり煌めきながら、皇女の顔を覗き込んでいることは見て取れた。
「これは美人になるなぁ」
「えぇ、殿方から引く手あまたでしょうね」
「不用意に伸ばした手は使い物にならなくなるな」
「ラルト、笑顔でなんてことを……」
「当たり前だ。俺の娘に手を出す輩にはそれなりの覚悟をもってもらわないとな」
 笑いを含んだ複数の男女の声が光とともに弾ける。皇女は空に手を伸ばした。だれかがその指をやさしく取る。健やかであれ。幸いであれ。祈りが光の粒を通じて、皇女にささやきかけてくる。
「あっ、笑った」
 皇女につられて人々が笑いさざめいた。