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Some Years After


 やぁ、この間はお招きどうもありがとう。とても素敵な夕食だった。
 さかのぼれば一週間前だ。あんな所で再会するとはとても思ってもみなかった。世界って結構狭いんだね。
 とても綺麗になってた君を見て、高校の頃の僕はなんて惜しいことをしたんだ、と後悔しています。
 口が上手くなったって言わないで欲しい。こちらにくるようになってから口が上手くなったなっていうのは、僕自身自覚していることなんだから。

 この間の席では、あまり長く話すこともできなかったので、手紙にすることにしました。昔のことを蒸し返すので、気分が悪くなるようだったら手紙は読まずに捨ててください。

 僕は、ずっと君に謝りたかった。

 昔のことを話しかけた僕に、君は終わったことでしょうといって笑った。喧嘩の理由を聞いていたはずなのに、怒りもしなかった。そして言ったね。
「うぬぼれでもいいなら、笑って。でも私は思うの。友達の前で、誰かが好きだと告白することは、とても勇気のいることだわ」
 そう。僕はあの時、正直に悪友に君の事を話すのが照れくさくて仕方がなかった。
 男が誰もがうらやむような、人気者の女の子に告白したっていうのなら、多分僕は胸を張って悪友に言っていた。玉砕したって笑い話になる。彼女にできれば万々歳だ。
 けれど誰もが、あんなやつ彼女にするのは御免だ、っていう女の子を、好きになってしまったら。
 ごめん。君が魅力的じゃないっていうわけではない。当時は――うん。まぁ、男の中ではあまり、評判がよろしくなかった、かも、しれない。
 でも、そう、僕は、君を好きになったって胸を張っていうことができなかったんだ。男っていうのは、見栄っ張りで、プライドが高くて、そして、臆病だから。
 男だから、君のスタイルのよさに惹かれたことは否定しないけど、君の懸命さを好きになったっていうのは、本当なんだ。
 もし、君が今フリーだったなら、今度こそ僕は胸をはって君に恋に落ちたといい、君に交際を申し込むところだ。こんなところで会ったのも、何かの縁だし。
 けれど、物事は上手くいかないものだ。

 僕はあのときの拳の痛みの理由を得たし、君が魅力的だったということを再確認して、昔の僕を、よしよし見る目は間違っていなかったって、褒めてやりたい気分で一杯だ。

 ありがとう。僕にいい恋をくれて。

 この間の夕食に出てきたタルトも、舌がとろけるぐらいに美味しかったよ。こんど、うちの雑誌でも紹介する。本当さ。
 どうか幸せに。


 PS.突然、僕を殴ったふとどきものにも宜しく。


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