ノーサンキュー異世界トリップ(プロテイン1000%LOVE)


 皆様ボンジュール。純子です。とても純粋な子であるように、との親の期待をへし折ってたいそうひねくれた子に育ちましたわたしが異世界などという世界に落下してしまったのは、マジ、超ガッデム、サノバビッチ! な気分です。将来不安要素は腐るほどありますが、真面目に地道に毎日を送っている私にとっては、姉がはまっているウェブ小説にでてくる異世界トリップなどという現象はとてもとてもえぇとても迷惑です。
 あぁわたくしこの退屈な日々に終止符をうって、見知らぬ世界で美形の王子様とめくるめく人生の第二ステージを謳歌してみたい! と現実逃避してばかりの姉を何故呼んでやらなんだ。異世界よ。

 美形に囲まれていても、きっと逃げ出すとは思いますがね。だれでも。

 ばぁんと扉を開けて現れたのは、美形です。が、マッチョです。

「ハァイマイハニー! 元気かい僕はとっても元気だ結婚してくれ」
「嫌ですうううううううううううぅうううううぎゃぁああああああああああああああああ」

 べきばきぼきばき

 骨が折れた気がします。魔法使いのマッチョがそっと回復魔法をかけてくれました。

「ハニーは華奢だなぁ」
「お前らがマッチョすぎるんだ!! なんでそんなに筋骨隆々なの!? もっと控えめに筋力つけろ!」

 美形王子(ただしマッチョ)は歯磨きのコマーシャルにでてくるような曇りない白い歯をきらっきらっと輝かせて私にぐっと親指立てました。

「筋肉。それは愛」
「わけわからんうけこたえすんな! マジすんな!」
「だってハニー、君が小さくて柔らかすぎるんだよはーマシュマロみたいだね愛してるよハニー」

 マシュマロのようなのはむしろ貴方の頭です。
 顔は美形なのに頭と身体がとても残念な仕様をしてますこの王子。しゃべるたびに筋肉ぴくぴく動くしさーてか、なぜ、むねを、はだけてるかな! この国のひとたちはなぜ、開襟シャツなのかな!?

「とりあえず私を抱きしめるときはせめて力加減をですね?」
「抱きしめてもいいんだねハニー!」

 うわぁあああああああああああ墓穴ほったぁあああああああああああ!!!!

「ちが、ちかよらないっきゃぁあああああああああああ!!」

 しばらくわたしは抱きしめられては腰砕け(文字通り)になり、魔法で回復し、また骨を粉砕されるというエンドレスループに陥ったのでした。

 現実にどうやったら帰れるのか、方法を常に募集しています。